足助の香嵐渓には、川沿いの開けた場所を利用して足助屋敷という観光スポットがある。
そこは、茅葺屋根や土蔵が立ち並ぶ日本ならではの手工芸の実演、販売、体験施設である。
最近では山間部の道の駅などに地場産業の体験コーナーがあったりするのだけど、ここのコンセプトは
「ここは 民芸でも伝統工芸でもない
自分の生活に必要なものは自分でつくる
健 かな山の生活が甦っただけなのだ
土から離れ
手足を使わなくなった現代生活が
慈しみを忘れ いかに貧しいものか
考えてみたいものだ」
であり、その名に恥じぬくらい、体験コーナーはわら細工、竹細工、竹編み、機織り、染色、紙すき、五平餅作りと非常に豊富で、さらに実演となると体験コーナーの種類に加えて桶作り、傘作り、炭焼き、鍛冶がほぼ毎日行われている。
決して広くはないのだが、これを全て観て体験しようとしたら、1日では到底足りない位のボリュームなのだ。
さながら日本の手工芸の技のデパートである。
鍛冶は実際に打っているのを観たのは初めてだったが、窯の熱さと炭の埃っぽさが酷くこんな中で黙々と仕事をする職人に男らしさと清々しさを感じた。
紙すきでは、奥の体験スペースに外国人の女学生らしい子達が3人居て、異国の文化を楽しんでいる様子だった。もう少し間近で見てみたかったが今回は時間が無かった為、体験は泣く泣く中止とした。
機械で作るのは速いけど、そこを敢えて人の技で作るとモノの価値が変わる。それは作る側も使う側も互いを認識するからだ。「土から離れ・・」と正面切って言われると、時代錯誤だと思ってしまうかも知れないけど、結局それは人と地球を護る事に繋がる、最先端の(そして、最も普遍的な)「慈しみ」のある思想なのだということだろう。
奥の薫風亭という喫茶店で豆乳アイスを食し、渓谷の流れをテラスで見ながら、これらの工芸がいずれも衰退の危機にあるのがとても残念だと思った。
続く