CLOUDNOTE-雲の旋律-

久しぶりに見た。
そして初めて最後まで観た。

今までの印象として、地味なイメージがあり、たぶんこのタイトルも、月島雫という主人公も、バロンという猫の紳士という登場人(?)物も知っていたのに、ストーリーがイマイチ覚えていなかったのは、あの頃は自分が子供だったからだろう。

これは大人が描いた子供の頃の作品である。

子供の頃、俺たちの周りには不思議でわくわくするものが一杯あった。
いつもの通学路も、一歩違う道に外れればそこは異世界で、探検のし甲斐があった。
棒きれを剣と称し、邪魔な葉っぱを切り落としながら進むだけの事が楽しかった。
それは今でも忘れていない。

今思えば、その時は時間と空間を超え、自分のイメージの世界を満喫していたのかも知れない。

イメージの世界。
それは、誰を傷つける事のない世界だ。でも、自分すら、傷つかない。
だから、現実にするのはためらう。
現実は冷たいと、分かっている子供も以外に多いのではなかろうか。

もし、自分の周りに夢に向かって進んでいる人がいるとしたら。
俺は少しの嫉妬と、多くの憧れを持つだろう。
月島も同じように、思っていた。
そんな時、どうすればいいのか、月島は悩んでいた。

「私もやればいいんだ」
答えは簡単だった。
そこから、月島の世界が拡がった。
そして、一つの確信を得て、エンディングへ辿り着く。

「私もやればいいんだ」
俺はこの言葉を聞いた時、悩んでいた事が晴れたような、清々しさを感じた。
シンプルで、でもどんな複雑な理論も吹き飛ばす力のある言葉だと思う。
そして、この希望の言葉はきっと大人に対して発しているのではないだろうかと思った。
日々現実に晒され、気付いたら何かを失いがちな大人達に対して。
だから、子供の話なのに子供には退屈なのだ。

これは、一つの青春文学と言ったら大袈裟だろうか。
出来ればTVシリーズ化して、月島のイメージの世界をもっともっと宮崎アニメで堪能したかった。
111分が、非常に短く感じた次第だ。