四限目の授業がチャイムと共に終わりを告げ、昼休みに入り、生徒達全員が昼食の準備に取り掛かった。
その中の一人である流哉も、人一倍お腹を空かせて昼食をとり始める。
他の生徒達は弁当箱やコンビニの袋を手に持ち、いくつかのグループを作り、楽しく会話をしながらご飯を食べている。
流哉のことを周りから見れば、一人さびしく自分の机で黙々と食べているが、別段友達がいないなどそういうわけではない。
わかっている。どうせあいつがまた、いつも通りの勢いで飯を誘いに・・・・・。
「よっ!常正。何一人孤独に食ってんだよ?一緒に食おうぜ。」・・・やっぱり来た。
予想通り、楽しそうな口調で喋りながら流哉に近づいた生徒は、手に持っている少し大きな弁当箱を流哉の机に置き、誰も座っていない席から椅子を取って流哉に向かい座った。
「俺はまだ一緒に食っていいとは言ってねぇぞ?」
意地悪い感じで言い放った流哉の台詞を、彼はちょっとした駆け引きのような言葉を言い返す。
「えっ、じゃぁ駄目なのか?」悪い微笑を顔に浮かべながら彼は言った。
この言葉に流哉はいつもと同じ言葉を言う。
「いや、別に良い。常異・・・俺が良いって言うまで待てないのか?」
「どうせオッケーだから問題ないやろ?ほらほら、さっさと食おうぜ。美味いご飯が冷める。」
常異は家から持ってきたであろう割り箸を割り、昼食を食べ始めた。
流哉にとっては気にくわない所が彼にはいくつかあるが、常異は小さい時からこういう性格の人間だともう俺はわかりきっている。
親友の中の一人。今だったら腐れ縁とも言える。
どうでもいいような他愛のない話をしていると、常異は流哉に一つ質問をした。
「どうなんやぁ?最近は。中共とうまくいってるか?」
「ん?俺はうまくいってると思うけど・・・なんか近頃はおかしく見えてるのか?」
「おかしいとは思ってねぇよ。それにしてもアツアツなこったなぁ。大道具係で一緒なんやろ?好きな人とお互い手助けしながら、作業をする。物事がはかどる事間違いないな!」
自分自身について語っているわけでもないのに、常異はとてもうれしそうな声と顔で話を続けている。
そんな彼の話を流哉は昼食を食べながら、静かに聞いていた。
「まぁ、大道具作りは順調に進んでいるし、近い内にはもう完成すると思う。」
「ちゃんとした物作ってくれよ。俺の演技の見栄えの良し悪しは常正達の仕事にかかってるからなぁ。」
内心、自分で本番までに演技を磨けよ。なんて思ってる流哉だが、実際、常異が務める配役はほぼ台詞なし、あるといってもほんの数行。なぜなら・・・
「常異・・・お前ただの石だろ。」
そこら辺の道路にあるような少し大きめの石。
しかしそんな脇役でも石という役に自信を持っていた彼に、流哉は少しながらも呆れていた。
役の取り合いでジャンケンに負けた時、石の役を嫌がっていたのにも関わらずまるで手の平を返すように、「こ・・・・・この役を俺はやりたかったんだ!!」と苦し紛れに言い放っていた常異の顔を、今でも流哉は思い出す。
喋り好きな常異の様々な話を聞いている間に、二人は昼食を食べ終え、弁当箱を片付けた。
「はぁ・・・。早く帰りてぇな。」
と、小さな声でつぶやく常異。家に帰って読みたい漫画でもあるのだろう。
常異浩太は無類の漫画好きで少年漫画や青年漫画、挙句の果てには少女漫画にまでも手を出している。
流哉は何度か彼の家を訪問したことがあるが、彼の自室には天井の高さぐらいある本棚がいくつもあり、その本棚にはありとあらゆる漫画がびっしりと揃えられている。
細かい事を言うと、常異は単行本派で、雑誌では読みたくないらしい。
彼が学校から早く家に帰りたい理由が漫画にあると予想した流哉は、
「何か今はまってる漫画でもあるのか?」と何気ない質問を一つした。
この流哉の質問は大当たりだったのだろう。まるで待っていましたと言わんばかりに、常異の顔はにやけた表情に早変わり。
本当に・・・・・わかりやすい奴。
「俺の今はまってるアツい漫画は・・・これだ!」
そう言って、彼は自分の懐に隠し持っていたある一冊の漫画を取り出し、流哉の目の前にその漫画を突きつけた。
「・・・報・・・・・復・・・・・?」
突き出してきた漫画の表紙は全体的に暗く、その表紙の中央に縦書きで、白く薄汚れたような字で、「報復」と書かれている。
「で、どんな漫画?お前が目をつけてるって事はそれなりに面白いんやろ?」
そうしてまた、常異の長い話が始まり、それは昼休みの終わりまで続いた。
