娑婆でも監獄の中でも、
人間が絶対に”踏み越えてはならない一線”がある。
殺人、凶悪犯罪、裏切り、麻薬、いくつもある。
一度、この一線を越えてしまったしまった人間は、
残念だけれども、もう戻ることは出来ない。
ただ、中には刑務所で、罪を償い、
命を洗い流し、生還に成功する人もいる。
だが、割合から言うと、ほどんどの人間が一線を越えた瞬間から、
心に悪の種がバラまかれる。
そして、計り知れない代償を払わされる裁決の日が訪れる。
わたしはこれまで、そんな人間を数多くみてきた。
その全員に共通しているのが、形相だ。
目の下に、特有のクマにも似た線が刻まれているのだ。
どの世界にも「掟」がある。
わたしの大切な人は、その世界の掟のために、
自らの命を差し出した。
その人が自ら、自分の頭に銃を撃ちつける音を、
わたしはこの耳で聞いた。
どんなことがあっても守るための人間の掟なのだ。
世間から見て「無罪」であたったとしても、
無罪と無実は違うのだ。
時に、与える傷は、死の痛手よりもひどい事がある。
報いとは、静寂が訪れた時にやってくる。
静寂を炎が包み込むように。