やだやだ。この性格。
診察前、待合で待ってる間、
周りの患者には私みたいに足が悪そうに歩いてる人とか、
明らかな側弯の人を全然見かけなかった。
一人だけ、キャリーに乗った6歳前後(もしかしたら小学生?)の子供がいて、
見るからに骨が細くて、
母親らしき人は白いコルセットを持ってた。
だから、あの子もきっと脊椎が……
って思いながら、なんか目が離せなくて。
その時、私が思ってたのは、
「私の母親が、もしこの目の前にいる子の母親なら、私は今こんなに苦しんでいなかったのかな…」
私の悪い癖。
タラレバと後悔ばっかり。
診察室に呼ばれると、医者はいろいろ質問してきた。
私の腰の診断経歴、あと家族構成。
そこまでは覚えてるんだけど、
そこからは断片的。
今は、私と子供2人の3人で暮らしてることを言うと、
「あなたの親は?」
って聞かれた。
近くに住んではいるけど疎遠になってて、ケンカしてるような関係だと説明した。
すると医者は、
手術するならココからココまで(首下から腰まで)固定しちゃうからかがめなくなるよ。
簡単な手術じゃないし、デメリットが大きすぎる。
子供がいて、他に助けてくれる大人がいない状況じゃ、まず無理。
なんだか、呆気にとられてしまった。
手術は私が思っていたよりも難しくて、
思っていたより術後の状況が悪そうだと思えた。
もちろん、心配性な私は、この日までにかなりの時間を使って、ネット上に蔓延る側弯症患者の実体験記事や、いろんな症状によって変わってくる手術内容や術後の状況を、時間の許す限り読み漁ったつもりでいた。
でも、なんとなく後から思えば、自分の都合のいいように、自分の許せる範囲の記事だけを頭に残していたのかもしれない。
医者は、
とりあえず、あなた個人の問題だけではないから、家族の方、あなたのお母様が一番いいと思うけど、次来る時に一緒に来てもらえますか。
と、淡々と言ってみせた。
やっぱり、そうなるのか。
やっぱり、私は親がいないと何もできないのか…
そんなことを思ったら、こらえきれずに号泣してた。
私は泣きながら、
母は、とても医者嫌いで、手術は絶対にさせてくれません…
もう…医者には行くなとか言うと思うし…
と、言いました。
医者はそんな私にイライラしているようで、
申し訳なさで胸が詰まりました。
医者に私と母親のことなんか話したところで、同情されるわけもないのに。
医者は、こちらを見ることなく話始めました。
あなたのお母様が病院嫌いだろうが、手術が嫌いだろうが、そんなことは自分にはどうでもいいもんで。
そんなことより、あなたが親に相談せず手術をして何か後遺症でも残ったときに、ほれみたことか!だから病院なんかいかなきゃ良かったんだわ!手術なんかするからだわ!って言われるのが困るのね。
正直、私の心はズタボロに傷つけられてた。
でも、医者も人間だし、言ってることはごもっともで…
医者は、またこちらを見ず、こう続けた。
親にはさぁ、子供の健康を守る義務があるから。
そのお母様だって親なんだから。
ちゃんと腹を割って話した方がいいと思うんだよね。
私は内心、
この人(医者)にとったら他人事なんだよね、やっぱ。
って、思った。
でも、
親には子供の健康を守る義務がある
っていう発言に、
私は、まだあの人(母親)の''子供"なんだ…
と、不意に衝撃を受けた。
私は、まだ落ち着かない溢れた涙を拭いながら、
分かりました。
と、言って診察室を出ました。
すごく面倒な患者だって思われてんだろうなー
ほんとに…。
その後、駐車場に戻った私はすぐさまLINEを開いて、母親に"お願い"をしました。





