たたく鍵盤をひとつ間違えると、最初からやり直しだった。
長い髪を束ねて、いつも着物を着ていた先生
普段は優しいのに、ピアノのレッスンの時は全く別人だった。
ピアノ発表会にも何度か出た。
1mほど下にある 客席の最前列
スポットライトの漏れた光で見えた、
優しい眼差しで見守ってくれていた先生。
『頑張れ』って言葉が聞こえるようだった。
先生の存在が力になっていた。
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十一歳、柿の実が黄色に彩る頃、
怖かった先生から逃げ出したくなった。
よく覚えていないが、
たぶん、バイエルの下を卒業したあたりから練習が更に厳しくなった。
先生から発する『気』が怖かった。
自分から先生に 『やめたい』って、言えなかった。
家に帰って、
母親に、『やめたい』って言った。
案の定、母は、それを全面的に否定した。
一週間が過ぎ
レッスンの日が来た。
レッスンを休むと、すごく叱られたから、
布団に入って丸くなって怯えていた。
そんな俺に、母は一通の手紙を俺に渡した。
『これ持って、先生に渡しておいで』
『きちんと、ありがとうございましたって、頭を下げておいで』
何が書かれているかは想像できた。
悩んだ。
自分自身に葛藤した。
子供の俺にとって、『ピアノをやめたい』っていう気持ちの変え方がわからなかった。
先生の、ピアノ発表会の時の、あの応援してくれた顔が
頭に浮かんできた。
イメージをかき消すことができなくて、
手紙をもって、がむしゃらに走った。
先生の自宅である、ピアノ教室の前まで来た。
門をくぐって いつもと違うルートで、中庭に出た。
いつも、渡り廊下から見る、柿の木の下に、俺はいた。
俺は、
その渡り廊下に、手紙を置いて
逃げ出した。
ものすごい罪悪感で、あたまの中がいっぱいになった。
ボロボロの涙で前が全く見えなかった。。
取り返しのつかない 想い出・・
賑やかだった夏が過ぎるこの頃、
自分では意識していないのに あの頃の景色が
何故だか思い出します。
先生に会って、謝りたいな。
あの時、もっとピアノを教えてもらえば良かったな。
『ごめんね、先生』
昨日のことである。
NSPのメンバー 中村貴之ライブが、
高田小町であった。
NSPは好きで、レコードは LP、EPとも、たぶん全部持っていた。
なつかしい NSP の曲が聴けた。
あの頃を思い出して、涙が出た。
NSPのナンバーで、一番好きな曲『去年の夏』も聴けた!
これは最高に嬉しかったな・・
この曲の最初の歌詞
子供のころ、ピアノを習っていた自分がそこに登場しているみたい・・
今更、気づいた。
やっぱ、名曲は 永遠 だな

