待ちわびた本たち
電車のきしむ音がゆっくりとした高音になり
目的の駅で止まった。
誰一人乗り合わせていない2両編成の電車を降りる。
空いた扉から流れ込む冷たい空気を切るように
降り立ったプラットホームを改札に向かうが
やはり、誰もいない。
ここは
昨年末から無人化された関山駅
誰もいない駅
待合室の
大きな木製の扉を開けると
幸せなほどに温かい空間がそこにあった。

誰もいないのに
誰が来てもいいように
誰かを待っている本たちが
温かく迎えてくれる。
ずーっと留守番をしているストーブと
人恋しくて待ちわびた本たちに迎えられると
なんだか優しい気持ちになる。



