※完レポです。ネタばれ嫌な方はブラウザバック!!
 
 
「入江さん……」「渡ったら終わりじゃないです」「……!」
私は入江さんの瞳を貫くように見つめた。入江さんは少し戸惑ったような視線で、私を見ている。
「何度でも渡ればいい。渡ったら終わりじゃない」
「また、戻ればいいし。来たくなったら来ればいいんですよ」入江さんが私のセリフに驚き、言葉を失っていた。
「……ホント、変な奴だな。お前は」
入江さんがポツリと呟き、ゆっくりと足を動かした。一歩、また一歩と、白浜と黒崎の距離が縮まっていく。
入江さんは少しずつだけど真っ直ぐに白浜へと渡る交差点を歩き始めた。
(入江さん……)
私は思わず、入江さんの元へと駆け寄った。
入江さんが傷付いた腕を伸ばし、グッと私の肩を抱き寄せた。
「渡っちまったよ」
顔を上げると、入江さんの頬が微かに赤らんでいた。
「アンタの、せいでな」「入江さん……」
吉「ったく。しょうがねぇな……」
大「まぁ、俺達も出会った時って、馬鹿みてぇに喧嘩してたしな」
吉良くんと大地くんがお互いの肩を叩いて、微笑みあっている。
真「俺達……?馬鹿みたいに暴れていたのは、お前達だけだ」
真山くんが眉をひそめ、呆れた表情を浮かべた。
藤「○○は通常は見えない心の信号を」「青に変えてしまう才能があるのかもしれねぇな」
石「あ、それいいね。今度、使わせて貰おうかな」
藤瀬くんと石森くんが微かに笑みを漏らし、拳をあわせた。
吉「ま、今日のところは、○○を貸してやるか」
吉良くんが肩をすくめて、私達を見ている。
「いつから、てめぇのものになったんだよ」
入江さんが呆れながらも、どこか心を許した表情で笑った。。
吉「うるせぇ!どいつもこいつも、あげ足ばっかとりやがって……」「行くぞ、大地!」
大「まぁ……いろいろあったけどよ。またな。入江」
大地くんが元気良く腕を上げ、私達に向かって手を振った。
真「先程の吉良の発言の補足だが」「○○との交際を認めた訳ではない。試用期間のようなものだ」「○○もそのつもりで、この後の時間を過ごすように」
真山くんが私達を指でビシッと指しながら、先生のように注意事項を告げた。
藤「まぁ、細けぇことは置いといてよ」「今度は喧嘩じゃなくて遊びにこい」
石「そうだね」「もう、しばらく喧嘩はいいや……。藤瀬、肩貸して」
石森くんが藤瀬くんの肩に腕を預けると、背中を見せて歩いていった。
「白浜か……。あんな奴らがいるなら、黒崎は勝てねぇな」
「勝ち負けじゃないですよ。もう、仲間ですから」「……だな」
私は入江さんの顔をそっと見上げた。戦いを終え、白浜へと渡ってきた入江さんの表情は、どこか清々しかった。
(入江さん……)
2人でみんなの背中を見送った後、入江さんがふいに私の顔を覗き込んだ。
「で……。今からどうする?」
入江さんが、少しいたずらに微笑んだ。
「えっと……そのぉ」「もし良ければ、なんですけど……」
(入江さんの視線が……。くすぐったいよ)
 
それから、私達は入江さんのケガの応急手当をする為に、私の家へと向かった。
 
「散らかってますけど。どうぞ」
私はピンクのカーテンの揺れる部屋へと、入江さんを通した。
「家の人は?」「えっと……。おばあちゃんは町内会の寄り合いで、遅くなるって」
「誰もいないのに、いいのかよ。……俺なんか上げて」
入江さんが微かに視線をさまよわせ、部屋の中を見渡している。
「入江さんは私を助けてケガしたんだから……。大丈夫です」
私は赤く染まる頬をごまかすように、そう言った。
(とは言ったものの……男の人がこの部屋に入るなんて)
(なんか緊張しちゃう……)
「えっと……。傷の手当しますから、とりあえず座って下さい」
私はピンクのクッションを入江さんの足元に差し出した。
「お……おう」
入江さんは戸惑いながらも、ピンクのクッションにそっと座り込んだ。
「えっと……。救急箱、救急箱」「……」
後ろを見ると、入江さんがしっかりと正座をしてクッションに座り込んでいた。
 
続く