※完レポです。ネタばれ嫌な方はブラウザバック!!
 
 
「決着、つけようぜ!大将」
入江さんが胸元で拳を構え、加賀見さんを見据えた。
加「かかってこいよ!」
加賀見さんが持っていた角材を放り投げ、拳を握り締めた。
 
……黒崎のリーダー加賀見さんに連れ去られ、監禁されてしまった私を助けてくれたのは、入江さんだった。
その結果、入江さんは黒崎の不良グループを裏切る形になってしまったのだ。
「入江さん……」
(負けないで!)
加「おらぁ!」
加賀見さんが足でリズムを刻みながら、拳を繰り出す。
「ちぃっ!」
入江さんが体を左右に振って、すんでのところで攻撃をかわした。
加「入江……黒崎を裏切って、ただで済むと思ってんのか!ああ!?」
激しい殴り合いの中、怒りを瞳に宿らせた加賀見さんの声が廃工場内に響き渡る。
「俺は……。黒崎を裏切るつもりなんかねぇ」加「!?」
加賀見さんの集中力が、一瞬そがれた。そして、その隙を狙った入江さんの鋭い蹴りが、加賀見さんのあごに炸裂した。
「俺達で黒崎一帯をしめる……」「初めてアンタとやり合った時の約束を、俺は忘れちゃいねぇ」
加「だったら!なんで俺のやり方に従わねぇ!」
加賀見さんが右足を踏み込み、体重を乗せた渾身の右ストレートを放った。
「今の黒崎のやり方がダセーってことに気付けよ!大将!」
入江さんが、加賀見さんの拳を額で受け止めた。
「きゃっ……」
肉を打つ鈍い音に、私は身をすくめた。
「脅しに闇討ち。人数揃えての追い込み。挙げ句に人質……」「こんなのは、俺のやり方じゃねぇ!」
入江さんの真っ直ぐな視線を受けて、加賀見さんがたじろいでいる。
「昔のアンタなら、俺と同じことを言ったろうよ!」
入江さんが額についた加賀見さんの拳を押すように、突進した。
「正々堂々と殴りあわねぇ奴に、俺は負けねぇ!」
(……入江さん!)
思いが込められた入江さんの拳が、うねりを上げて加賀見さんの右頬を打ち抜いた。
加「グッ……」
加賀見さんが唇に血をにじませながら、膝から崩れ落ちた。
加「随分、気持ちこもったパンチじゃねぇか……」「……」
加賀見さんが荒々しく息を吐きながら、口元の血を乱暴に拭っている。
加「変わったな、入江」「……いや、変わっちまったのは俺か」
加賀見さんが一言一言を吐き出すように、話し始めた。
「俺も変わったさ……。こんな青臭いセリフ。ガラじゃねぇ」「少し前なら、考えもしなかったろうよ」
入江さんがふいに、私の瞳に視線を送ってくれた。
加「やけに染みるぜ……」
加賀見さんが小さく呟き、中庭に仰向けに横たわった。入江さんは何も言わずに、負けを認めた加賀見さんを見つめている。
(入江さんも加賀見さんも……。こんなに正々堂々と戦って)
私は2人の男の熱いやり取りを見て、思わず胸が熱くなってしまった。
哲「うおお!なんだか感動的だぜ!」
入江さん達を見守っている哲さんの頬に滝のように涙が流れている。
大「これにて一件落着!ってな!」
吉「お前が締めてんじゃねぇよ」
大地くんがニカッと笑い、吉良くんが突っ込んだ。
(良かった……。入江さんが無事で)
石「○○を守ってくれたナイトのとこに、行ってあげれば?」
石森くん優しく私の肩に手をのせ、入江さんの方に顔を向けた。
「……」「……」
戦いを終え、傷だらけになった入江さんと、私の視線が交わった。
 
 
A.視線をそらす
○ B.歩み寄る
C.ハンカチを渡す
 
 
(入江さん……)
私はかける言葉も見つからず、ただ呆然と、入江さんのもとに歩み寄っていった。
「ああ。なんかふくもんあるか?」
入江さんが微かに切れた口元に、右手の甲を当てた。
「あ……はい」
私は急いでポケットからハンカチを出し、入江に渡した。
「悪いな」
入江さんは小声で私にお礼を言うと、ハンカチを広げた。
(わわ……)
だけど、そのハンカチは、ぶくぶくと太ったクマさんがハチミツをなめている、可愛いらしいハンカチだった。
 
続くw