※完レポです。ネタばれ嫌な方はブラウザバック!!
「くそ……。後、少しだったのによ」
入江さんが、悔しそうに呟いている。
加「何が、後少しだって?入江」
加賀見さんが全てを見抜いているかのような視線で、入江さんをえぐるように見つめている。
「この女は関係ねぇ……。白浜は俺がカタをつけるからよ」
入江さんが息を荒げながら、私を庇うように腕を差し伸べた。
加「もう、遅せぇよ。女をエサに馬鹿どもを引きずり出して潰す」「俺の描いた絵はもう完成しちまってんだからよ」
加賀見さんが首を回しながら、ニヤリと笑った。
「しょうがねぇな……。こうなっちまったらよ」加「そういうことだ。女ぁ、差し出せや。入江」
加賀見さんが顎で私をさしている。
「入江さん……?」
私は胸に手を当てて、入江さんを見上げた。
「こうなっちまったら、やるしかねぇよな!」「……えっ!」
入江さんは私を自分の後ろに軽く突き飛ばすと、加賀見さんに向かって一直線に突っ込んで行った。
加「とち狂ったマネしてんじゃねぇぞ!入江ぇ!」
加賀見さんの手下が、突進してくる入江さんに向かって、次々と角材を降り下ろしていく。肉を打つ鈍く重い音が、中庭に響き渡った。
(入江さん……!)
「逃げろ!」「でも!」
入江さんが口元に血をにじませ、肩で息をしながら、悲痛な叫び声を上げる。
「入江さんを置いて……行けないよ!」
私は流れる涙を抑えようともせずに、拳を握り締めながら、叫んだ。
「うぜぇんだよ!俺に構うんじゃねぇ!」「もともと、お前なんかに興味ねぇし!住む世界も違いすぎなんだよ!」「行け!行けよ!馬鹿が!」
入江さんが想いを吐き出すように、私に向かって叫んでいる。
「入江……さん……」
入江さんが、容赦なく降り下ろされる角材を受けながら、苦しそうに息を吐いている。私の頬にとめどなく涙が溢れていった。
加「かっこいいじゃねぇか?入江」
加賀見さんの強烈なボディブローが、入江さんを突き上げた。
「……!?」
鮮血が足元に広がり、入江さんが地面に膝をついた。
哲「くそ……。もう、見てられねぇよ」
哲さんが悔しそうに顔を歪め、ドアの向こうに姿を消した。
加「女をもとのところに閉じ込めておけ。入江は…………そうだな」「両腕折って、外に捨てておけ」
F「マジっすか……!?英男さん」G「……さすがにそれは」
加賀見さんの冷酷な眼差しを見て、手下達も息を呑んでいる。
「折ってみろよ……」「……!?」
震える膝を力で抑え込み、入江さんが加賀見さんを睨みながら立ち上がった。
「腕を折られてもよ……。この女にだけは、指1本触れさせねぇ」
入江さんが切れたまぶたの上から血を流しながら私を壁に押し付け、守るように体で覆った。
「……入江さん」加「笑わせんなよ……。そのボロボロの体で、何ができるっつーんだ!」
加賀見さんが入江さんの背中に、力の限り角材を降り下ろした。
「……くっ」
入江さんが私の頭を両腕で包み込みながら、声を漏らしている。
「入江さん!無茶しないで!」「こんなん……。なんでもねぇよ……」
入江さんの背中や肩に、容赦なく角材やバットが降り下ろされていく。私は一瞬、手で顔を覆った。
「……なんで、逃げなかったんだよ」「だって……。私だけ逃げるなんて」
とめどなく溢れる涙をグッとこらえ、私は言葉を紡ぎ出した。
「ホント……。しょうがねぇ奴だな」
入江さんが目元や口元に血をにじませながらも、優しく微笑んでくれた。
「もうすぐ助けがくるからよ……。それまで涙は抑えておけよ」「助け……?」
私は唖然とした表情で、入江さんを見つめた。
「いつもは、馬鹿ばっか言ってるけどよ。本当は頼れる熱い馬鹿がいんだよ……」
「それまで俺が時間、稼ぐから……。泣かずに待ってろ」
入江さんが、私の頭をクシャッと撫でてくれる。そしてラストスタンドと言わんばかりに、加賀見さんに向け、再びファインティングポーズを取った。
「そろそろ、決着つけようぜ……。大将」加「かかってこいや!入江!お前らは手ぇ出すんじゃねぇぞ!」
続く