※完レポです。ネタばれ嫌な方はブラウザバック!!
「くそ……。見張りが増えてやがる」
広い廃工場のあちこちに黒崎の不良が立ち、私達を見張っていた。
(他に逃げ道がないかな……)(足手まといにならないように、頑張らなくちゃ!)
<選択肢>
A.物音を立てて隠れる
B.換気口から逃げよう
○ C.私も戦います
(えっと……。こういう時は)
私の脳裏にアクション映画のワンシーンが、不意に浮かんだ。
「換気口から逃げましょう!」
私は天井近くにある、換気口の蓋を指差した。
「映画じゃよくあるシーンだけどよ。どこに繋がってるか、分かったもんじゃねぇな」
「そ、そうですよね……」
(ちょっと考えが足りなかったかも……)
私が少し落ち込んでいると、入江さんが肩をぽんと叩いてくれた。
「だけどよ……。迷ってる暇はねぇよな」
入江さんが換気口の蓋に手をかけると、鉄枠の部分が音を立てて床に転がり落ちた。
「くそ……。錆びて腐ってやがったか」
入江さんが悔しそうに顔をしかめて、唇を噛みしめた。
黒崎不良F「なんか物音がしたぞ!」
不良達が手に角材を持ち、警戒した様子でこちらに近付いてきた。
「ロッカーに隠れろ。早く」「……はい!」
私は入江さんに手を引かれ、ロッカーの陰へと隠れた。
F「見ろよ!女がいねぇ!」G「くそ!2人やられてんぞ!」
見張りをしていた不良達が、私の閉じ込められていた部屋で声を荒げている。
H「良く探せ!逃げられたら加賀見さんに殺されるぞ!」
不良達の焦った声が、廃工場の廊下に響き渡っている。
「映画みたいに上手く行くか心配だったけどよ……」「どうにか、なりそうだな」「は……はい」
入江さんの瞳を見ながら、小さく頷いた。
私は古びたロッカーの陰で、入江さんに背中から抱き締められ、身を潜めていた。背中を通して、入江さんの温かい体温が伝わってくる。
銀色の髪が私の耳元で揺れ、吐息が首をくすぐる。
(こんな状況なのに……。ドキドキしちゃうなんて)
私は声を殺しながら、大きく息を吐いた。
(だけど、入江さんと一緒にいると、なぜか“大丈夫”って思える……)(やっぱり、この気持ちって……)
「よし……。行くなら、今だな。○○」
入江さんが真剣な表情で、サッと左手を差し出した。私は命綱でも掴むかのように、強くその手を握りしめた。
「……」
そして、入江さんに向かって、声を出さずに大きく頷いた。入江さんは私の手を引きながら、足音を忍ばせ駆け出した。
(もしかして……。今……私のこと……。名前で呼んでくれた?)
私は胸の高鳴りを隠しながら、入江さんと2人、手を取り合って廊下を駆けて行った。
それから私達は見張りの目をかいくぐり、なんとか出口の近くまで辿り着いた。
廃工場の中庭は、壊れた部品が散乱し雑草が伸びていて、私は何度か足を取られそうになってしまった。
「あっ……」
思わずつまずいた私の手を、入江さんが握り締めてくれる。
「後、少しだな……。平気か?」「……大丈夫です」
私達は息を切らしながら、同時に頷いた。
(外にさえ出られれば……なんとかなるかもしれない)
次の瞬間、近くの扉が突然、音を立てて開いた。
「俺の背中に隠れろ」
入江さんが鋭く目を光らせて、私の前にすっと立った。
(まさか……。見張りの人に……)
体を強張らせる私達の前に姿を見せたのは、哲さんだった。
「哲さん!?」哲「○○ちゃん。入江……」
哲さんが目を見開いて、私と入江さんを見ている。一瞬の静寂が、私達を貫いていく。
哲「白浜で人質をさらったって聞いたからよ。もしかしてって思ってよ」
哲さんが少し顔を赤らめて、頭をかいている。
(哲さん。助けに来てくれたんだ……)
哲「行けよ、入江。俺は何も見てねぇ。俺が来た時には白浜の女は逃げてたって言っておくからよ」「……頼んだ、哲」「ありがとう。哲さん」
私達が再び歩き出そうとすると、外へと通じる門がゆっくりと開いた。
「!?」
入江さんが鋭い眼差しで開け放たれた門を見つめている。すると、大勢の手下を引き連れた加賀見さんが、口の端を上げながら中庭に入ってきた。