※完レポです。ネタばれ嫌な方はブラウザバック!!
混濁する意識の中、映像が浮かんでは消えていく。
石「○○……。逃げて……」
わき腹を押さえてうずくまる、石森くんの悲痛な叫び声。
「ここまでやる必要はねぇだろうが」
拳を握り締め、獣のように鋭く加賀見さんを射抜く、入江さんの瞳。
(私……。確か帰り道を歩いている時に……)
赤錆びた工場機械が、埃の被ったシートで覆われている。
窓はベニヤ板が打ち付けられ、あちこちにガラスの破片が散乱している。
「……ううっ」
私は汚れたマットレスの上で、ゆっくりと瞼を開けた。微かに腹部に残る鈍痛を手のひらでやわらげ、私は薄気味悪い廃工場の内部を見渡す。
「そうだ……。石森くんがバットで殴られて、それから、加賀見さん達にここに連れて来られたんだ……」
(石森くん……。大丈夫かな?)(入江さん。加賀見さんに掴みかかりそうな勢いだったけど……)
「とにかく……。ここから逃げなくちゃ」
私は服についた埃を払い、そっと立ち上がった。
すると、両開きの大きな扉が軋みを立てながら開いた。
(……!?)
黒崎の不良D「へぇ。結構、可愛いじゃんか」
下卑た笑みを浮かべたスキンヘッドの不良と、眉に傷のある不良が、ポケットに手を突っ込みながら近付いてくる。
(……ど、どうしよう?)
E「だろ?加賀見さんは余計なことすんなって言ってたけどよぉ」D「ちょっとぐらい、楽しんでもいいよな!」
不良達が、私の体をなめるように見ている。私はその視線から逃げるように、思わず後ずさった。
「近付かないで!」
(逃げなくちゃ!!)
思えば思うほど、足がガタガタと震えてしまう。
(誰か……助けて!)
<選択肢>
A.哲さん!
B.石森くん!
○ C.入江さん!
「入江さん!助けて!」
私は思わず、叫び声を上げた。
D「ああ?」E「なんでお前が、入江の名前知ってたんだよ?」D「そういや、最近この女。入江と親しかったみてぇだけど……」
不良達が思い出すように、少し上を向いて話している。
D「でも、まぁ……。関係ねぇよな」
スキンヘッドの不良の指が、私の制服に伸びた。
「その女に指1本でも触れたら……殺すぞ、てめぇら」
扉の向こうに人影が走り、ガラス片がうるさいほどに音を立てた。
(え……!?)
突然、現れた入江さんが、スキンヘッドに拳を見舞った。
「……入江さん!!」E「入江!冗談だって!マジになるなよ!」
眉に傷のある不良が、手をバタバタと振りながら、窓際に逃げていく。
「笑えねぇよ」
眉に傷のある不良が入江さんの強烈なボディブローを受けて、白目をむいて壁にもたれかかった。
「平気か?アンタ」「……」
(入江さんが……助けてくれた)
緊張と恐怖に脅えていた体はまだ震え続け、うまく言葉が出てこなかった。
その代わりに、安堵の涙が一滴、頬を伝っていった。
「……無事で良かった」
入江さんが優しく微笑んで大きく息を吐くと、そっと手を伸ばし、私を抱き寄せた。
「!?」
入江さんの指先が、微かに震えている。その震えが、さっき不良を殴り飛ばしたからじゃないことを、私は分かっていた。
(入江さん……)(心配してくれてたんだ……)
私は、入江さんの胸に顔をうずめた。コトコトと規則的に鳴る心臓の音が、私の強張った心を徐々に溶かしていく。
「良かった……。本当に」
入江さんがギュッと強く私を抱き締めた。
「……入江さん。ちょっとだけ、苦しいです……」
落ち着きを少し取り戻した私は、小声で呟いた。
「……悪い。俺、女の扱いとか。その……」
入江さんが微かに頬を染めながら、恥ずかしそうに視線をそらす。
「とにかく、こっから逃げねぇとな」「でも……。私を逃がしたら入江さんは……」
(加賀見さんに報復されるんじゃ……)
戸惑いを隠せない私に向かって、入江さんが言い放った。
「そんなことを言ってる場合じゃねぇよ。行くぞ」
入江さんが扉に手をかけて、私の瞳を見つめている。私は入江さんの心に応えるように、しっかりと頷き返した。
続く