※完レポです。ネタばれ嫌な方はブラウザバック!!
 
それから私は石森くんに送られて、家へと向かった。いつもの通学路にも商店街にも、黒崎の不良が見張りでもしているかのように立っている。
 
「……吉良くん達のこと。捜してるのかな?」石「……だね。事態が落ち着くまで、○○は俺が送るから。安心して」
 
石森くんが金髪の髪を風になびかせながら、爽やかに微笑む。すると、通りの向こうで駄菓子屋の商品を見ている人影が目に入った。
(あの……銀髪の後ろ姿……)
「入江さん!」「ああ?」
入江さんが青いビー玉の入った、ラムネの瓶を片手に振り返った。
 
石「入江でもそういうの、飲むんだね」「飲んじゃ、悪いかよ」「つーか。お前らの中で、俺は何キャラなんだよ?」
 
入江さんが不満そうに呟く。
石「ゆるキャラではないよね」
私と石森くんは入江さんと顔を見合わせて、プッと吹き出した。
(少しずつ接していると……)(入江さんって、そんなに怖い人じゃないような気がしてくる)
入江さんはビー玉がガラス瓶に当たる透き通った音を鳴らしながら、ラムネを一口飲んだ。そして、口の端についた水滴を乱暴に手の甲で拭った。
「……」「なんだよ?」
(わわっ……。一瞬、見とれちゃったかも……)
 
「わ……私も喉、乾いちゃった。何か飲もうかな?」
 
私は千代ババの店のショーケースの中を覗き込んだ。
 
「入江さん。おススメとかありますか?」「俺?ああ。ジェリオの中では、コーラ味を良く飲むけど」「コーラ味か……。私はこっちの冷やし飴にしようかな」「アンタ。意外と人の話聞いてねぇのな」
 
入江さんが呆れたように口を尖らせた。
 
「そ、そんなことないですよ。……それより入江さん。お腹空きません?」「おごってくれんのかよ」「あ……はい。おごります」
 
(ワンピース買っちゃって、お財布ピンチだけど……)(駄菓子屋くらいなら大丈夫だよね)
 
「冗談。好きな物言えよ。おごってやるからよ」
 
入江さんが右手に持ったラムネ瓶をカランと鳴らした。
 
「え、じゃあ、ソースせんべいと、やっちゃんイカと、チューブゼリーと、それから、それから」
 
私は食い入るようにショーケースの中を見つめた。
 
「マジでそんな食うのかよ。別に構わねぇけど」
 
入江さんがラムネを飲み干して、微かに笑った。
「じょ……冗談ですよ!」
私は少し顔を赤らめながら、両手の拳をぶんぶんと振った。
(あれ……でも)(いつの間にか、大地くん達と一緒にいる時と同じように、入江さんと接してた……)
 
「これとこれ、くれよ」千代ババ「あいよ!お兄さん。男前だね!」
 
入江さんが少し照れた表情で、髪をかき上げている。
(やっぱり、入江さんって……)(みんなが言うほど怖い人じゃない気がする)
私は笑顔でお釣りを受け取る、入江さんの後ろ姿を見つめていた。入江さんは紙袋を受け取ると、キョロキョロと辺りを見回している。美容室春子の前では、石森くんが春子さんと何やら話し込んでいた。
 
「……場所、変えんぞ」「えっ?そこのベンチに座らないんですか?」
 
私は千代ババの店の前にあるベンチに視線を移した。
 
「ここじゃ……。人に見られて恥ずいだろうが」
 
入江さんが顔を横に向けて、微かに頬を染める。
 
「それに、うちのヤツらの目もあるからよ。アンタも落ち着かねぇだろ?」
 
(入江さん……。私に気を遣ってくれてるんだ)(ぶっきらぼうだけど……。入江さんの優しさって温かいなぁ)
 
「じゃあ……。通学路から少し離れた場所に行きましょうか?」「どっか、オススメの場所あったら。そこで良いからよ」
 
(オススメの場所かぁ……?どこが良いかな?)
私は腕を組んで考え込みながら、白浜の風景を次々に脳裏に思い浮かべた。
 
「そうだ!あそこなら黒崎の人達は来ないかも!」