※完レポです。ネタばれ嫌な方はブラウザバック!!
 
 
「あの……ご趣味は?」「見合いか?」
 
入江さんが私に鋭く突っ込み、目を細めた。
 
「いや……その。何かお話した方が良いかな、なんて思って!」「だからって、ご趣味は?は、ねぇだろ」
 
(うう。また失敗しちゃった)
 
「アンタといると、ホント、調子が狂う。……変わった女だな」
 
入江さんが堪えきれないように、プッと吹き出した。
マ「お待たせしました」
少し和んだ空気が流れたその時、マスターがコーヒーと紅茶をテーブルに運んで来てくれた。
(これで話題が広がるかな?)(飲み物についてとか……)
「砂糖……。いります?」
私はシュガーポットに手を置いて、入江さんの方を見た。
 
「あ?いらねぇ。ほんの少し、ミルク落とすだけ」「じゃあ……。ミルク、どうぞ」「……ああ」
 
(“入江さんはコーヒーを飲む時、ミルクを数滴落とすだけ”)(なんとなく、忘れたくないな……)
私が頭の中で復唱していると、入江さんがコーヒーカップを片手に、私の瞳をじっと除き込んだ。
「なんですか……?」
(考えてた事、ばれちゃったのかな?)
 
「アンタは?馬鹿ほど入れそうだよな?砂糖もミルクも」「て、適量です!適量!」「フッ。ムキになるなよ」
 
入江さんはそう言うと、今までに見せたことのない優しい笑顔を浮かべてくれた。その表情があまりにも温かくて……。
紅茶の中で静かに混ざっていくミルクと砂糖のように、私の心も自然と和らいでいった。
(入江さん……)
お互いにカップを手に取り、同時にテーブルに置く。何でもないことが、少し特別に思えた
(えっと……。次は何を話そうかな)(そうだ。休みの日の過ごし方とか……)
 
「入江さん……。あの」「お休みの日とか、いつも何してるんですか?」「休みの日?」
 
入江さんが腕を組んで、窓の向こうを横目で見ている。
 
「寝てるか……。犬の散歩」「犬?入江さん、犬飼ってるんですか?」
 
(そういえば、犬飼ってたって言ってたよね)
 
「いや、うちのじゃねぇよ」
入江さんが困ったように目を泳がせている。
 
「隣のばあちゃんがよ、飼ってる犬をな。ちょっと……」「優しいんですね。隣のおばあちゃんのお手伝いをするなんて」「そんなんじゃねぇよ」「ただ、1人暮らしだから、何かとな」
 
入江さんが恥ずかしそうに顔を赤らめている。
 
「犬の名前……なんて言うんですか?」「……マロンとプリン」
入江さんがボソッと呟く。
(入江さんの口から……。そんな甘い言葉が出るなんて)
 
「見てみたいな。マロンちゃんとプリンちゃん……」「あっ?」
 
入江さんが困ったように視線を動かしている。
(わわ……。これじゃ誘って下さいって言ってるみたいだよね)
私が俯いたその時、聞き慣れた声が店の外から聞こえてきた。
哲「○○ちゅわん……」
(わっ……!)
哲さんが喫茶店の窓ガラスに顔を貼り付けて、私達を見ている。
「て、哲さん!?」「ゴフッ!」
入江さんが、飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになっている。
「何、やってんだ!?馬鹿が!」
入江さんがナプキンで口元を拭っていると、目を血走らせた哲さんが店の中に飛び込んできた。
 
哲「入江!俺の○○ちゃんに手を出すんじゃねぇ!」「うるせぇのが来ちまったな」
 
入江さんが面倒臭そうにテーブルに突っ伏したその時、入江さんが携帯をポケットから取り出した。
 
「さらに、厄介なのから電話がきたか」
(ん……?)
「なんだよ?英雄さん」「……学校に一旦、集合?」「分かったよ。すぐ行くからよ」
 
入江さんはピッと携帯を切ると、ゆっくりと席から立ち上がった。
まだ続く(-o-;)