※完レポです。ネタばれ嫌な方はブラウザバック!
 
 
それから私は、おばあちゃんに頼まれたCDを買った後、お気に入りのショップを見て回った。
(わぁ……。もう、新作のワンピースが出てる)
 
「さてと、一通り見て回ったし。帰ろうかな?」
 
(可愛いワンピースも見つかったし……。楽しかったな)
私が紙袋を持ち直し、駅に向かおうとしたその時。路地の向こうから、怒鳴り声が聞こえてきた。
 
不良A「待てやおらぁ!」吉良・私「待てって言われて待つ馬鹿がいるかよ!」
 
ゴミ箱を飛び越えて大通りに姿を見せたのは、吉良くんだった。
 
大地「つーか!ここどこだよ!駅から離れたんじゃね?」
 
吉良くんの後を追い、大地くんも大通りに飛び出してくる。
 
「吉良くん!それに大地くんも!」大「○○!早くどっか行けっての!」
 
大地くんが唇に指を当てて、路地をチラッと見た。
 
A「おらぁ!ちょこまか逃げてんじゃねぇぞ!」
 
数人の不良達がゴミ箱を蹴散らし、吉良くん達目掛け走ってくる。
吉「うっせぇ!ザコが!」
吉良くんが相手の拳をひらりとかわし、鋭い右ストレートで不良の顎を捉えた。
 
B「死ねや!白浜ぁ!」大「やられっかよ!タコ!」
 
大地くんが顎ヒゲの不良のお腹に、膝蹴りを豪快に決めた。
吉「早く、行け!馬鹿!」
吉良くんが私を見て、手で“逃げろ”と合図を送った。
 
「吉良くん。私を巻き込まないようにしてくれてるんだ……」「逃げなきゃ」
 
私が吉良くん達の邪魔にならないように、走り出そうとした瞬間。何者かの手が、私を物陰に引きずり込んだ。(えっ?何……!?)
「は、離して!」
私が腕を振り払おうと大きな声を出したその時、繊細な長い指が私の口元を覆った。
 
「声、出すなよ。見つかると厄介だからよ」
 
振り向いたその先には、入江さんの横顔があった。入江さんの吐息がすぐ近くに感じられて、その銀色の髪が私の頬をくすぐる。
「……入江さん」
入江さんが私の肩に手を置いて、吉良くん達と黒崎の不良達の乱闘を見ている。
 
A「誰か!加賀見さんに連絡しろ!」吉「させっかよ!」
 
吉良くんの華麗な飛び蹴りが、茶髪の不良の右手に届き、銀色の携帯が空に弾かれる。
 
柴田「こらー!お前ら、何をやっとるかー!」
 
(柴田さん……!?)
駐在の柴田さんの声が、少し遠くの方から聞こえてきた。
大「うお!馬鹿駐在の柴田!」
大地くんがおののきながら、柴田さんを見ている。
 
吉「なんであいつが黒崎にいるんだよ!」大「逃げっぞ、吉良!」
 
疾風のように自転車を走らす柴田さんから逃げるように、吉良くんや不良達の慌ただしい足音が徐々に遠ざかっていった。
 
「ったく。人の話、聞いてたのかよ?」
 
入江さんが私の肩から手を離し、乱れた髪をかきあげた。
 
「吉良達と一緒にいるとこ見られたら、面倒だって言ったろ」「……すみません」
 
(入江さんの言う通り……。軽率だったかも……)
私は返す言葉が見つからなかった。視線を落とす私を見て、入江さんが小さくため息をついた。
 
「アンタって、ちょっと鈍い犬みてぇな」「ええっ!?」
(犬……)
「うるせぇとか、馬鹿とか言っても、尻尾振ってるみたいなよ」「そ、そうですかね……」
 
(もしかして……。呆れられてるのかな?)
 
「昔、飼ってた犬がそんなだったな」
 
そう言って、遠くを見る入江さんの表情は、少し優しかった。
(入江さん。今……笑った?)(そ、そうだ。前、助けてもらったお礼をちゃんと言わなくちゃ)
 
 
続く