※完レポです。ネタばれ嫌な方は回れ右してください。
キーンコーン、カーンコーン
初夏の太陽が眩しく緑を照らす、6月。白浜北高校の終業のチャイムがのどかな町に響き渡っている。
桑田「連絡事項が幾つかあるので、良く聞くようにー。職員会議で出た議案なんだが……」
桑田先生が面倒臭そうに眼鏡の位置を整えて、教室を見渡した。私は先生の話を聞きながら、周りに座っている転校生達を見回した。
(みんなが転校してきて、もう2カ月か……あっという間だったよね)
私は、ふと左隣に座っている真山くんに視線を移した。真山くんは何やら真面目な表情で、机の上にのっている数枚の紙を睨みつけていた。
(真山くん……。何やってるんだろう?)
石森「さっきさ。チラッと見えたんだけど、内容がラブレターっぽかったよ」
石森くんが机に寝そべりながら、私に向かって小声で囁いた。
「ラブレター!?」
大きな声が出てしまい、私は思わず両手で口を押さえた。
吉良「俺が内容チェックしてやるよ。見せてみろよ。真山くんよぉ」
真山くんの後ろに座っている吉良くんがニヤリと笑いながら、手紙を1枚、奪い取った。
吉良「えっと……”私は真山先輩が好きです”」
吉良くんがラブレターを読み上げながら、顔を引きつらせている。
大地「他のは、どんな内容だよ!!真山ちゃん!」
私の後ろの席の大地くんが手紙をつかみ取り、声をあげて読み始めた。
大地「”クールな真山さんに憧れてます。真山先輩LOVEです。!”」 「……だってよ!」
大地くんが呆れた様子で、手紙をひらひらとはためかせながら、みんなに見せている。
真山「作業の途中だ。返せ、高柳」
真山くんが腕を組んで言い放った。
(作業……?)
藤瀬「俺にも見せてくれないか?そのラブ」
藤瀬くんが言葉の途中で、真っ赤になってうつむいてしまった。
大地「んだよ!たっちゃん!ラブレターっていうのも恥ずかしいのかよ!」
吉良「どんだけ恥ずかしがり屋だよ!」
うつむいている藤瀬くんに、大地くんと吉良くんがビシッと突っ込む。
(ふふふ……。なんだかんだ言って、みんな仲が良いよね) (でも、初めて会った時は大変だったよね……)
私は教室の窓から空を見上げ、みんなに初めて会ったあの日のことを思い出していた。
「あの……こういうの、もう、やめてください……」
哲「恥ずかしがってるだけだろ?○○ちゅわん」
始業式の日。哲さんが、いつものように私を待ち伏せしていた。哲さんは1年の頃から交際を迫っている黒崎高校の生徒だ。そして困っている私の前に現れたのが、まだ名前も知らない転校生のみんなだった。
石森「うざいよ?そういうの」 大地「ウダウダ、うっせーんだよ……。おめぇ」
石森くんが哲さんの腕をひょいと捻り上げ、大地くんが哲さんに向かって飛び蹴りを決めた。
「やめて!みんな!」
そこに颯爽と現れ、喧嘩を止めてくれたのが真山くんだった。
真山「やめなさい」
真山くんは突然、哲さんの腕をつかみ、投げ飛ばした。綺麗に1回転して地面に尻餅をついた哲さんが、驚いた顔で真山くんを見上げていた。
真山「やめろと言っているのが、聞こえないのか!」
(真山くんのお陰で喧嘩は収まったけど、喧嘩を間近で見たのなんて初めてだったから……) (あの時はビックリしちゃったなぁ……)
だけど、5人全員が転校生だと聞いて、私はさらに驚いてしまったのだ。
5人の転校生全員が、壇上に並んだ自己紹介の時も、吉良くんと大地くんは一触即発のムードで睨みあっていた。
吉良「やんのか!赤毛サル!」 大地「なんだと!コラァ!
こんな状況でも石森くんはそっぽを向いていたし、真山くんは文庫本を読みふけっていた。
藤瀬「…………」
(藤瀬くんは会った時からひたすら無言で、何考えているのか、全く分からなかったし……) (この5人と仲良くやっていけるのかなぁって、すごく不安になったけど……)
桑田「おい!聞いてんのか?お前らー」
私は桑田先生の声でハッと我に返った。石森くん達は桑田先生の声など気にならないと言った様子で、真山くんのもらったラブレターを覗き込んでいた。
(仲良くしているみんなを見ていると……初めて会った時の、一触即発のムードが嘘みたいに思える)
石森「これ……?
石森くんが小首を傾げ、ラブレターの右上を指でさした。
(うん……?)
なぜか、ラブレターの右上に”0点”と赤ペンでチェックが入っている。
(真山くん……。ひょっとしてラブレターの採点したのかな?)
石森「これって内容で決めてるわけじゃないよね?」
石森くんが大地くんの持っていた手紙をそっと取り、真山君の机に置いた。
真山「恋文の内容など平安の頃から千差万別」 「人がそれに採点するとはおこがましいことだ。……だが」
「だけど?」
私が小首を傾げて尋ねると、真山くんが大きく息を吐いて、首を横に振った。
真山「どの手紙にも名前が記載れされていない!したがって0点だ!」 大地「真面目か!」
大地くんがビシッと指をさし、真山くんに突っ込んでいる。
真山「一部の手紙には誤字脱字も含まれていたので」 「チェックを入れたのだが、名前の分からぬ相手にどうやって返送すべきか?」
真山くんが腕を組んで、眉間に指を置いた。
藤瀬「まるで、赤ペン先生だな」
藤瀬くんが感心した様子でうなずいている。
大地「こんな赤ペン先生、嫌じゃね?」
大地くんが方をすくめ、苦笑いを浮かべている。
吉良「なんで、こんな馬鹿がモテるんだよ?」
吉良くんが真山くんの椅子の足を蹴飛ばした。
桑田「こらー!いい加減うるさいぞ!吉良!きちんと話を聞いていたのかー?」
桑田先生がプリントを教卓に叩きつけ、吉良くんをキッと睨んだ。
吉良「や……。全く」
だけど吉良くんは悪びれた様子もなく、手をパタパタと振るだけだった。
桑田「呆れたヤツだな……。もう一度、言うぞー」 「最近、黒崎の不良生徒が学校近辺で目撃されている」 「数日前には、白浜の生徒が駅前で乱闘騒ぎを起こしたという通報も入った」 吉良「!?」
吉良くんが桑田先生の話を聞いて、目を大きく見開いた。
(……まさか。吉良くん!?)
桑田「容姿が、吉良と高柳に似ていたそうだが?」
桑田先生が厳しい眼差しで、吉良くんと大地くんを交互に見ている。
吉良「行くぞ!大地!」
吉良くんが窓枠に勢いよく手をつき、その反動で教室の窓から飛び出していった。
「吉良くん!危ないよ!」 大地「ちょ、置いてくなって!吉良!」
続けて大地くんが、体をひらりとひるがえし、窓の外に姿を消した。
桑田「全く……。やれやれだ」
桑田先生が呆れた表情で、ヨレヨレのネクタイを引っ張った。
藤瀬「小学生以下だな」 石森「だけど、見てて飽きないよね」
藤瀬くんが瞳を閉じて首を振り、石森くんが楽しそうに微笑んでいる。
(転校してきた頃は、毎日喧嘩ばかりしていたけど……) (最近、すごく仲が良くなってきて、嬉しいな)
「新垣先生。さようなら!」 新垣「気を付けて帰れよー。○○!」
私は竹刀を背負った新垣先生と挨拶を交わし、下駄箱から靴を取りだした。すると校庭の方から何やら声が聞こえてきた。
(うん……?)
女子生徒A「ねぇ。校門に立ってるの黒崎の人だよね?」 B[誰か探してるんだって!怖くない?」
(黒崎の……人?)
私は昇降口の扉から、校門の方へと目をやった。
哲「○○ちゅわーん!今日も会いに来たぜー!」 「て、哲さん!」
先生のいって歌黒崎高校の生徒って哲さんのことだったんだ。
(見つかると色々困るなぁ……)
選択肢
○A裏庭から逃げる
B ? ←メモし忘れた

C正面突破だ!
「よし……。裏庭からこっそり逃げちゃおう」
私は哲さんに見つからないように裏庭へと向かった。
(うん……?)
私が裏庭に入ると、プラタヌスの木の下で石森くんが居眠りをしているのが目に入った。
「石森くん……」 石森「誰かから逃げてるの?」
石森くんが眠たそうに目を開けて、まぶたをこする。
「え!?逃げてるというか、隠れてるというか」
(どうして、分かっちゃったんだろう……?)
石森「桑田が言ってたみたいにさ。黒崎の生徒がうろうろしてるから、気を付けてね。何かあったら俺に言うんだよ」
石森くんが寝そべりながら、軽く片目を閉じた。
「うん、ありがとう。石森くん」
私は石森くんにお礼を言うと、ひまわり畑を抜けて、学校の外へと出で行った。
「ふぅ……。どうにか逃げられたかな?」
(好きだって言って貰えるのは嬉しいんだけどなぁ。……ふぅ)
私は後ろを振り返り、小さくため息を吐いた。
「さてと、……。ちょっと本屋さんにでも寄ってから帰ろうかな?」
私がカバンを抱え歩きだそうとしたその時、数人の人影に取り囲まれてしまった。
長い(-"-;A まだ入江が出てきてないのに2へ続きますm(_ _ )m