86.「ジュースが飲みたい」を英語で表わせるか


私が旧制高校生以降に買った専門書、関連教養書は、主に洋書であるが、数千冊、いやほぼ一万冊はあるであろうが、私はこれらの本の山の中で日々暮らしていて、またその中で寝ているのである。

この莫大な洋書の山の中に、英米で買い集めた絵本、絵入り辞典、児童やローティーン・レベルの物語類がある。これらは私の基礎英語知識力を固めるためのものでもあった。

そういう児童ものの本の乱読によって、どれほど基本語について私は知り得たことであろう。

例えば、カタカタの「ヒップ」を英語のhipは違う。「ボート」とboatもズレている。太陽(the sun)の色はyellowで描かれている、などなど。

もう50年も前のこと、こういう本国人の児童(native-speaking children)向きのpicture dictionaryをパラパラとページをくって拾い読みをしていたところ、juiceとその説明図が私の目に止まったのである。鉄板皿の上に牛肉が一切れのっていて、この肉片のまわりに液体がにじみ出ていて、それをjuiceと示していたのであった。それまでも私は、当然juicy beefという表現は知ってはいたが、いわゆる「肉汁」をただjuiceと表わしているのが興味深かったのである。

そして私は一方では英米人と<語学的対話?>は年中していて、その中である時、「日本人は果物のジュースをただjuiceが飲みたい、と言うが、これは変である。英語では具体的に、orange juice, grapefruit juice, apple juice, pine-apple juiceなどと表わしている。まあまずfruit juiceと言っても通じるであろうが、結局はどのfruitのジュースか言わざるを得なくなるのである・・・」

これを要するに、juiceという語は「ジュース」より広義である、ということである。したがって、I want to drink juice.などというのは、日本人式英語である、ということになる。


[小山田注]juiceは「100%果汁」の飲み物なので、通常のいわゆる「ジュース」はsoft drinkです(このことも、以前小笠原先生に伺いました)。