74.掲示'Ford here'の意味[Oxfordにて]

世界の最高学府と見なされているものは、一つだけではない英国では、Oxbridgeとロンドン大学、米国ならハーバード、プリンストン、スタンフォード、それにMITも、というように英語国だけでもいくつかある。

私は縁あって、オックスフォード大学の客員研究員という称号を与えられている。そういうわけで、時々オックスフォード大学に滞在することがある。そういう時、大学構内から足を伸ばして、周りの豊かな自然の中を散策することがある。するとほうぼうに小川(brooks, streams)がある。

ケンブリッジ(Cambridge)という大学名のことであるが、構内に「Cam川」という小川が流れていて、そこに小さなbridgeがかかっているのを渡った時、これがCambridgeという地名の由来なのか、と思ったものである。

一方、オックスフォード(Oxford)大学のまわりには牧草地がたくさん拡がっていて、そこに(ox; oxen)が放牧されているのが見られる。オックスフォード大学出身のMathew Arnold(1823~88;文芸評論家)はオックスフォード大学で教え、その構内に居住していたとか、思索や執筆に疲れると、彼は構内から近隣の林や森や草原を散歩したようで、今でも Mathew Arnold's Philosophy's Path(マシュー・アーノルドの哲学的小径)と名付けられた道があり、私もそこを何回か散歩したものである。

この小径以外にもいくつかの小径をよく散策したものだが、そういう小径が流れ(stream)と交差しているところがあり、そこにはいわゆる浅瀬になっていて、次のような掲示が立っていた。

Ford here

これを見て、私は始めて ford という動詞があることを知った。観ていると、そこを自動車や木とか自転車や、通行者が浅瀬を渡って行くのであった。それで私は動詞 ford は<歩いたりして浅瀬を渡る>意味だと見当がついたのである。後刻オックスフォード市内の書店で英英辞典を立ち読みしてみて、やはりそういう意味だと確認したのである。

かくして、Oxfordという名前は、<ox+ford>という語構成で<牛が浅瀬を歩いて渡る(ところ)>という意味を持った地名であることが分かった。