64.2.1.コカコーラの機械は down the hall にあります(1)


私が初めて米国に行った時、絶対にこの目で見てみたいと計画を立てていたものは、大体がすでに本や雑誌に掲載されていた写真で見ていたものが多かった。サンフランシスコの金門橋(the Golden Gate Bridge)、ニューヨーク市の自由の女神像(The Stature of Liberty)、ボストンのなぎsとその近くの英国軍との戦いが行われた古戦場、サン・アントニオ(テキサス)のアラモ砦(とりで)、ロサンジェルスのサンセット通り(Sunset Boulverd)、それとナイアガラの滝(the Niagara Falls)であった。こう並べてみると、私も結構ミーハーなところがあるのかな、と思えるのだが、やはり名所は名所だから、私の検分を広げることが出来たのだからと思い直そう。




今回は、このナイアガラの滝を見て、至近距離のナイアガラ・ヒルトンに一泊するため、そこのフロントでチェック・インをしていた時の実に興味深い体験について語りたい。




私がロビーに背を向けてチェック・インのカウンターでパスポートを見せ、用紙に必要事項を記入していた時、背後でドヤドヤと足音がしたので振り返ってみると、明らかに日本の若者(男性)3人ほどがいて、その1人がカウンターの係員(front desk clerk)に向かってこういったのである。




J: Where is Coca Cola m,achine?


C: Down the hall, sir.


J: Thank you.




私は日本人の英語理解度の実態を研究テーマにしている人間だったので、係員の言った down the hall ということが、この日本の大学生らしき若者たちにわかったのかどうか関心があって、どうなることか成り行きを見ていると、




J:こっちだ、こっちだ。そこに階段があるから降りていけばあるんだ。行こう。


[3人はロビーのはずれの階段を地階に降りて行ってしまった。]




1分も経たぬうちに例の3人は手ぶらで戻って来て、その1人がフロントに向かってこう言ったのである。




J: There is no Coca Cola machine.




(続)