53.1 いくつかの店舗名を観察する(1)


(a) 「古書店(古本屋)」


私が海外を歩き回っている時、年、田舎を問わず通りに古本屋があると、飛び込んで棚の隅から隅へと目を走らせ、興味を引かれる本屋雑誌があると購入し、持ち帰るか、郵送を依頼したものである。つつましい年金生活者である昨今は、こういう楽しみはもう持てなくなった。


この古本屋には、日本でも店名そのもの、つまり経営者個人を模した店名や、地名やら、古典などから取った何やら格式ある名称を冠したものまである。


「小川書店」「田中書店」「正木書店」…

「一誠堂書店」「宗文荘書店」「進省堂書店」…


英語国での例を列記してみる。

Smith's Bookstore / Johnson's Store...

Coral Gable Bookstore / Collins Street Book Company


これでは新刊書店か古本屋か分からないので、店名の下に次のように付記してある。


「 Books

bought & Sold」


「   Books

second-hand book dealer」


上のbought & soldは、日本語の古書売買に当たるので、興味深い。bought and sold と「売買」は順序が逆になっているからである。


[注] 私が旧制中学の生徒の時、戦時中と戦後2年間くらいの時であったが、英語担当の教師は、「『古本』を直訳して、old book(s) と表してはいけない。used book(s) か second-hand book(s) と表している。 old bool(s) は、1世紀や2世紀も昔の本のことで、rare book(s) の部類である」と言われたのを覚えている。なお、こうした部類の本のことを、antique book(s) と言うこともある。