49.1. storeとshop
storeというのは「店」のことと、昭和49年(1974年)夏までは単純に思っていた。もっともshopも「店」で、単に商品を売っているstoreと違って、そこで何か作業しているのがshopである、と言うぐらいの知識はあった。shopの具体例は、barber shop / butcher shop / bakershop など。理髪店、食肉店、パン屋などは、そこで店主が作業をしているから、store よりは shop の部類だということぐらいは知っていた。
昭和49年(1974年)、私は、今の若い人達と違って45歳になって、やっと英国を含めてヨーロッパを訪れることが出来たのである。それまで米国には既に2、3回行っていた後でのことであった。貧乏な私は慈悲では海外に行けなかったのが、この英国とヨーロッパへの初めての旅行はユネスコ(UNESCO)の関係筋から資金が出て可能となったのである。私のいつもの流儀で、初めてのロンドンで、ひたすら街を方々歩き回り、建物のたたずまい、各種の看板、掲示に注意し、写真を撮ったり、メモを取ったりしたのである。
そういう機会のある時、ロンドンの裏通りの一軒のものものしい錠前で閉まっている鉄の扉が目についたのである。その鉄の扉のうえに白いペンキで、“STORE”と書いてあったのである。
そうか、store は元々は「倉庫」とのことだったのか、storage(貯蔵庫)という派生語もあるし…と悟ったのである。
この体験から、storeは物品を仕入れて、並べて(あるいは積み重ねて)販売しているところ(店)のことだ、と分かったのである。つまり、店で何か作業して作っている shop と対するものであるという結論に達したのである [付]なお、workshop という語を思い併せられたい。
「デパート」は department store であって、(×)department shop とは言えない。日本の<せんべいを手作りして売っている店>はstoreではなく shop である、と考えめぐらせたのである。この種の「おせんべい店」は、a hard-rice-cake shop と表わせよう。