33.(6)a grandfather clockとは
昭和45年(1970年)頃のことであるが、私の知人で親しかった天野一夫先生(東京外国語大学、東北大学卒、千葉大学教授、故人)は、“a grandfather clock”を「おじいさんの時計」と訳されていたことがあり、これに対し、では “grandfather's clock” とどう違うのかと指摘されて立ち往生してしまったという一件があり、英語教育界の一部でちょっとした話題になったのであった。そもそも、、“a grandfather clock”とはどういうものなのか、今ではあまり見かけなくなっているようであるが、私は何回か見かけたことがある。どういう場所でか、2、3挙げてみる。
私は小学校の低学年の頃、冬は風邪をこじらせるとすぐ扁桃腺(へんとうせん)が腫れて苦しんだので、市ヶ谷駅近くの外科に連れて行かれ、除去してしまったのであるが、この立派な病院の正面入口を入った所に、背の高い木のケースの中で長い振り子が揺れている時計があった。今考えるとあれが、“a grandfather clock”であったのである。
大学生時代、私は御茶ノ水駅すぐ近くの眼科に家庭教師に行っていた。この眼科は皇室の侍医でもあって、その家の孫の男の子に英語を教えていたが、この家庭の応接間に“a grandfather clock”があって時を刻んでいたのであった。