32.「うさぎ小屋」に住んでいる?
戦後、あの愚かな大戦で打ちのめされた日本とドイツは、国民が勤勉な性格であったことや、科学技術立国として復興しようとして、それをやり遂げたということもあって、戦勝国であった国々から驚きの目をもって見られていたのであった。そこにはまたやっかみの感情もあって、何かと皮肉られもした。
その中で、ヨーロッパのある国(フランスあたり?)の見識者が「日本人はエコノミックアニマルになってしまって稼ぎまくっている、金を貯め込んでいる一方で『うさぎ小屋』のようなところに住んでいる」とコメントしたことが、当時報道された物である。そしてこれには後日談もあって、当時の大蔵省当局が、フランスや英国あたりの民家の平均的広さを調べ、また日本の家の平均的な広さと比べて、その差は大きいものではない、「うさぎ小屋」と呼ばわりされるのは心外だ、と発表したりしたものである。
この騒動のおかげ(?)で、私のことだから、そもそも「うさぎ小屋」というのは英語でどう表しているのか、まず知りたく思ったのである。数人の英国人の友人、知人に訊いてみると、rabbit hutchesと呼んでいるとのこと、rabbit houseとかrabiit hutとは言わないことが分かったのである。
そこで私は、なぜhutchesと普通は複数形で表しているのかと訊くと同時に、「うさぎ小屋」の絵を描いてみて欲しい、と白い紙一枚と鉛筆をわたしてみたところ、概略次のような絵を描いてくれたのである。
これをあえて言えば、日本の学校の出入口にある生徒の靴置き場に似た形の棚状の箱で、数十という各々の箱の中に「うさぎ」が一匹ずつ入れて飼育されているのである。
日本人の多くは(一部の農家は別として)うさぎを飼うという時、それは小さな篭か金網の檻の中に1匹なり2、3匹飼っている。しかもペットとしてであって、食用とか毛皮を取るためではない。私が1973年頃初めてフランスにUNESCO関係のことで訪れた時、街の肉屋の店頭にも、毛皮を剥いだピンク色をしたうさぎが数匹ぶら下がっていたもので、フランス人はうさぎ肉を食べ、またうさぎの毛皮(ラパン、lapin)のコートを着る人がいることを知ったものである。