30.1.(d)「サラリーマン」に当たる英語は salarymanか?


戦時中の旧制中学校で「サラリーマン」は英語では、“salaried man”と言う、と習ったものである。しかし、当時の先生は、英語圏における週給の存在だの、salaryをもらっている階層の話しなどはされなかった。だからと言って、当時の英語の先生を責めることは出来ない。先生方は英米に行く機会も無く、また多くの洋書を読むこともあまり無かったのである。



30.1.(e)「サラリーマン」を英語で表すには


英米では、salaryを取っている人たちは、工場や商店などで働いているのではなく、オフィス系で働いているので、office worker(s) と表しておけばよいであろう。


[付]「ホワイトカラー」と「ブルーカラー」


今時の若い日本人が、この二つのカタカナ語を知っているか、また知っているとして、ここでの「カラー」の意味を知っているのかどうか。私は、早大、慶応大での定年制度によって大学教員の職を去ったので、大学生を使っての彼らの語学知識の実態を調査することが、今では出来ないのが残念ではある。

ここでの「カラー」の直前に「ホワイト」とか「ブルー」という色彩語が使われているので、「カラー」はcolo(u)rのことと取ってしまうかもしれないが、実は“collar”(シャツなどの襟)のことである。オフィス系、つまり事務系の者と、工場などの現場系の者とを対照的に表現したものである。

“white-collar”にしろ“blue-collar”にしろ、語法的には形容詞なので、英語では、“white-collar worker”や“blue-collar worker”の形で使われることが多い。

ここで言いたかったことは、white-collar workerの多くはsalaryを、一方blue-collar workerのほうは weekly payをもらっている、ということである。



30.1.(f)「OL」は英語か?


“OL”は、日本人が作り出した略号(略称)である。多分、“office lady”の略語というつもりであろうが、そもそも現代英語では、“lady”という語は敬称に近い語で、それ以外の状況でやたらと使う語ではない。女性が自分のことを “office lady”と表したら、おかしなことと取られよう。では、ladyの代わりにwomanにしてみても、なんでわざわざ womanと言うのか、男か女か見るなり前後の文脈から分かるのであって、“office-working woman”などと言うこともない。要するに、女性の office wirkerなのであって、それにいちいち性別を付して表すこともないのである。

結局英語では、「サラリーマン」も「OL」も、office workerすませて表せばよいのである。