19.「塀」に当たる英語



米国の郊外の住宅地を散歩したことが何回かある。各戸の敷地は、日本の住宅地のそれよりずっと広い。

興味深いことには、通り(道路側)には塀がない家が多いのである。歩道([米] sidewalk/[英]pavement)と各戸の front yard との境界(boundary)に塀がないので、各戸の構造や外見がよく見えるのである。


「塀」に当たる英語は、fence, hedge, wallの3語がある。もし塀がある場合、最も多いのは fenceで、「柵(さく)」とでも訳せるものであり、板でできていて白く塗ってある。その次が hedge で、これは「生け垣」のことである。wallは壁状のものであるが、個人住宅には wall はめったに見当たらない。


東京の場合、整った住宅地としては、田園調布、自由が丘、深沢(世田谷区)、南荻窪(杉並区)、善福寺(杉並区)などを挙げることが出来るが、そこで見かける塀で最も多いのは石塀(wall)である。もっともこの「石」は、いわゆる大谷石か、コンクリート製である。英米では、石の塀は学校か工場に見られ、個人の住宅にあれば、趣味がよくないと思われてしまうものである。


私が、「米国の郊外の住宅地では家の敷地と通りの境い目には塀がないことが多い」と、大学の講義の時に言うと、学生は、「では、通りと敷地の境い目はどうして分かるのですか」という質問が出てくる。私の答えは、次のようなものである。

「敷地は緑の芝生になっていて、歩道はコンクリートなどになっているので、その色の違いがくっきりしている」


[補] 「米国の住宅街の通り側には塀がない所が多い」と聞くと、「では住宅の中が丸見えではないか」と思う人がいるであろうが、そうならないように通り側の「窓」は細長い小さなのが上にあるだけで、大きな窓は backyard 側にあることが多い。