11.1. She will be a good wife. と She will become a good wife.

 私は大学文学部英語学科を卒業して都立上野高、東京学芸大附属中学、東大付属高校などで教壇に立ったのであるが、東京学芸大附属中学で教えていた頃、そこの同僚からある出版社のために「『中学英語の総まとめ』という小冊子を書きおろしてくれ。」と頼まれ、その原稿を一気に書き上げたことがある。その始めの方で、いわゆるBe動詞と一般動詞の疑問文、否定文の作り方を取りあげたのであるが、その関連でBe動詞の意味用法として、次の3種類が基本であると述べておいたのである。

 (а) 存在 (~がある) (~がいる)

 (b) 等式的 (~である)

 (c) 変化 (~になる)

 しかし、その後数年してbeには(c)の用法はないと考えるようになったのである。

 私が(c)の用法というものがあると当時思いこんだのは、上掲文の She will be a good wife. だの、 It will be cloudy this afternoon. (曇りになるだろう)といった例文の場合を考えていたためである。

 ある時、いくつかの英英辞典でbeのところを引いてみたが、 be = become と示してあるものが一冊を除いてはなかったので、(c)用法はないに等しいという認識に達したのである。

 She will become a good wife. というのは、become は<なり変わる>ということであるから、彼女は今は女性としてはあまりいい人ではないが、結婚したらいい妻になる(=なり変わる)だろう、という含みがある表現であろう。

 一方、She will be a good wife. は、彼女は今は女性として例えば優しく、気が利いて働きものであるから、結婚してもそのままいい妻であり続けるだろうという含みがあると考えられる。

 とすると、 It will be cloudy this afternoon. は、今朝は晴れているが、午後は曇ってくるということを私などは考えていたが、それなら It will become cloudy this afternoon. であることになる。それがbe動詞が使われているのだから、今朝は晴れていないにしても、あまりいい天気ではないことになってしまう。この辺のことはまだネイティブスピーカーに確かめてないので、真意は不明である。