次に私がいた場所は、Hさんの自宅。
Hさんの自宅は、高円寺にほど近い西荻窪にあり、T不動産会社から歩いて数分の距離のところにあったのでした。
「事務所で話をしてもいいのですが、でも自宅すぐなんですよね、自宅の方がいいかな…」 と独り言のようにつぶやいているのを聞きながら、
『ここは一体どのへんなんだろう?』 と思っていたら、住宅地の一角に車が入って止まった。
「さぁさぁ、どうぞ」
さぁさぁ、どうぞと言われて、入ったところは玄関に子供のおもちゃや靴やらが並んでいる、どっからどう見ても自宅。玄関ホールには子供の写真があっちにもこっちにも。
え~、ここマジに自宅じゃん。自宅兼不動産事務所かと思ったけど、マジに自宅。
それにしても、初対面で会ってからまだ1時間足らず。
お見合いでも、会ったその日に自宅に連れ込まれる、なんてことはないはず(笑)
しかも私たちは友達ではなく、不動産の営業マンと客の関係。
『今から何が始まるんだろう?監禁されて怪しい契約書にサインさせられたりして…』 と落ち着かない私をよそに、Hさんはいきなりスコーンを作り始めたのでした。
「硬さはこれぐらい、あんまり混ぜないようにして、あーして、こーして」 とものの見事に5分ぐらいで作り上げ、オーブンで焼いている間に、不動産投資の本を持ってきて紹介してくれたり、金利と利回りの関係で合格物件を判定する方法(Hさんが開発した『しゅんけんくん』) を教えてくれたり、ノートの使い方を教えてくれたり、目が回るようなスピードで次から次へと話があっちに飛び、こっちに飛び、その間にスコーンの焼き具合もチェックし、お茶を入れ替えてくれたりと…、あ~忙しい!
ふとHさんを見上げると、汗だく状態。
『えっと…、なんでこんなことになっているんだ?』
続く