PRESIDENT 2013年9月30日号 掲載
2012年終わりから13年前半にかけて、いわゆるアベノミクスの高揚感のなかで、企業内の人材管理に関係する幾つかの議論が盛んに行われた。代表的なのが「解雇規制の緩和」といわゆる「限定正社員」。これを書いている直近になって、労働時間規制の緩和に関する議論が加わってきた。
解雇規制緩和は「正社員」の雇用保障緩和の議論であり、限定正社員とは、勤務地や職種を限定した雇用契約を導入する動きである。労働時間規制に関しては、かなり以前に話題になった「ホワイトカラー?エグゼンプション」(一定年収以上のホワイトカラー労働者について、労働基準法の労働時間規制を緩和すること)を、経済特区方式を用いて一部の業種や地域で実行しようとする案である。議論されている内容に共通するのは、すべてこれらがいわゆる「正社員」の働き方に関する改革である点である。
あまり知られていないかもしれないが、労働法には、「正社員」という言葉の明確な定義はない。私も前に、ある政府審議会のなかで、「正社員」という言葉は、何を意味するのかを問われて、法律的な定義はなく、企業の人事管理のなかで使われる従業員の雇用区分だと答えた覚えがある。つまり、企業の人事管理上の用語なのである。または、統計調査上、就業形態の状況を把握するための「呼称」だと主張する研究者もいる。このなかで明確に規定されている唯一の法的条件は、雇用契約期間に関してだけであり、有期雇用が期間の定めある雇用、無期雇用が期間の限定のない雇用である。もちろん、多くの企業で、 モンスター ヘッドホン -ステファンカリー バッシュ 年はやってくるわけだから、人事管理上は、定年までの長期有期雇用という解釈もできる。
したがって、「正社員」をどう管理するかは、個別企業に任されているところが大きい。つまり、正社員の管理の仕方には多様性がありえるのである。例えば、多くの優良企業では、正社員に関しての雇用維持努力は、法律遵守だからやっているのではなく、(少なくともこれまでは)それが企業の合理的な行動だったから継続されてきたのである。また、多くの経営者がそうした行動が正しいと信じている。強い雇用保障に伴う「正社員」管理(賞与の支給、定期昇給、手厚い福利厚生など)なども、多くの企業で実現されており、またそれが規範化している。
このような企業に働く正社員が通常の「正社員」イメージに近い。守られた存在としての正社員である。こうした従業員については、たとえ現在盛んに議論されている解雇規制の緩和が実現したとしても、大きな影響をもつとは思えない。正社員の強い雇用保障とそれに伴う人事管理のあり方は、その正しさが一種の規範として維持されているために、これを変えるには大きな努力が必要だからである。
■なぜ優良企業でもコア人材としての認識がもてないか
逆に、多くの企業が、法律に規制されて、無理やり今までのやり方をとってきたというのであれば、法律を変えれば、一気に変化は起こるだろう。解雇規制緩和論者が求めている雇用の流動化も起こるだろう。だが、実態はそうではないのである。
また、正社員の無定義とそれにともなう雇用管理の多様性には、対極もある。「周辺的正社員」と呼ばれる正社員の存在である。「周辺的正社員」にも明確な定義があるわけではないのだが、いろいろな議論を総合すると、一応、雇用期間の定めのない正社員ではあるのだが、昇給や賞与などがなく、処遇全般も非正規雇用とほぼ同じというグループ、ということらしい。
誤解を恐れずにまとめるとすれば、法律的に規定された雇用保障以外の労働条件は、非正規社員とほぼ同じである正社員ということになる。「名ばかり正社員」と呼ばれることもある。
こうした働き方をしている正社員にとって、雇用保障というのは、ある意味で恐ろしい労働条件なのである。多くの正社員が、安定という希望をともなう雇用契約を得られるのだから、かなり劣悪な労働条件でも受け入れてしまう。だが、極端に言えば、多少劣悪な環境でも、正社員になれるのであれば、という気持ちが起こってしまうのである。そのため、雇う企業が労働者を人として扱うつもりのない、いわゆる「ブラック企業」の場合、雇用保障はある意味では、劣悪な労働条件で人を使う一種の免罪符のようになってしまうのである。そして、肝心の雇用保障も、雇用主の意向で簡単に覆されることもある。さらに、雇用契約を打ち切るにあたっては、マスコミ報道などが正しいとすれば、「追い出し部屋」などと呼ばれる、問題のある方法がとられるのである。実際、周辺的正社員と呼ばれる人たちがどのぐらいの割合存在するのかについては、明確な定義のない対象なのでわからないが、一部には、25%前後という推定もある。ただ、いろいろな話を総合すると、増加傾向にあるようである。
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