clark-ogのブログ

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※この台本。台本としての体はなしていますが、如何せんシリーズものの一話でしかないので、全体が完成するまでは未完と同義です。そのため、今後内容が変更される恐れがあります。ご了承ください。

 

※王や人形たちは明確な性別を持たない存在なので、中性ということにしています

 

 

 呪言(じゅごん)の王・ペンチ ♂♀ 「何でも知ってる呪言の王」で知られる賢者

 業火の王・ランプ ♂♀ 七人の王の内、最強の王。常に寝たきりであり、自身を「病人」と卑下する。

 

 

共通のこと* 七人の王と、それらが生み出した十二体の人形。彼らは世界と人を脅かす、襲来者というものと対峙する。

 

 

ペンチ「久しぶりだね、ランプ」

 

ランプ「ああ。とても久しい。最後に会ったのはいつだったか……

     すぐには思い出せない程度、時が過ぎたか」

 

ペンチ「本当ならもっと君と会いたいところだけど、私も忙しくてね」

 

ランプ「何でも知ってる呪言の王、だろう?

     国民の相談役として、大層活躍しているらしいな」

 

ペンチ「ありがたいことにね……

     だからといって、君に会いに来なかったのは、私の怠慢だね。

     国民も大事だけど、君のことだってもっと気にかけなきゃいけないはずなのに」

 

ランプ「おまえが楽しんでいるなら、それでいいだろう。

     病人と話をするよりも楽しいことを見つけたなら、それに心行くまで興じればいい」

 

ペンチ「今度、散歩にでも行こうよ。私が連れて行くからさ」

 

ランプ「……いい。眠るほうがずっと楽だ」

 

ペンチ「変わらないね。君はずっとそうだ。

     でもたまには動かないと、いつか本当に動けなくなっちゃうよ」

 

ランプ「構わん。病人は病人らしくしているほうが迷惑も掛からんからな」

 

ペンチ「そんなこと言わないでよ。寂しいじゃないか……

     テレパシーを使わずにわざわざここに来たのも、

     君と直接会って話がしたかったからなんだ。

     もし君が起き上がることだけじゃなく、話すことさえも忘れてしまったら、私は……」

 

ランプ「それ以上は言うな。悲しいのはお前だけではないのだから」

 

ペンチ「……ランプには、わずかにでも残った人間らしさを維持していてほしいんだよ。

     たとえ私よりも言葉を話すことが苦手になってしまったとしても、

     誰かと話しをしたいっていう気持ちだけはいつまでも持ち続けていてほしい。

     誰かと繋がることは楽しいんだってことを忘れないでほしい。

     私は、君の友人として切にそう願ってるんだ」

 

ランプ「泣くな、友よ」

 

ペンチ「うん……そうだね。

     ……今日はね、大事な話がしたくてやってきたんだ」

 

ランプ「概要はメイスから聞いた」

 

ペンチ「話が早くて助かるよ」

 

ペンチ「…………近いうち、私たちの世界は襲来者によって攻撃を受ける」

 

ランプ「なんだ、それは」

 

ペンチ「襲来者が何なのかは、私にもわからない。

     何のためにやってくるのか、なぜ私たちを攻撃するのか……。

     だけど、それがこの世界にやってきて、人間や私たちを襲うことは間違いないんだ」

 

 (ランプは驚いていた)

 

ペンチ「信じられない、よね。でも残念ながら本当のこと、事実なんだ。

     近い未来、そういう事が起こる。

     それも一回だけじゃなく、定期的に起こるようになる」

 

ランプ「私たちはそれに対抗せねばならんのか」

 

ペンチ「七人の王それぞれに備わっている不死の能力、そして王の証を使ってね」

 

ランプ「予め知っていたかのような口ぶりだな」

 

ペンチ「そうだよ、ずっと前からわかってた。

     でもね、起こりもしない時期に話しても、みんなを不安にさせるだけだから、話さないようにしてたんだ。

     敵がどれくらい強いかもわからない以上、対策だって立てられないんだからね」

 

ランプ「しかし、心構えはできたはずだ」

 

ペンチ「そんなものに意味があると思う?」

 

ランプ「……ない、か」

 

ペンチ「心構えは今するんだよ。私は今日、そのために来たんだから」

 

ランプ「他の者にはこのことは話してあるのか?」

 

ペンチ「ううん。今はランプだけだよ。

     ほかの皆には、必要に合わせて話していこうと思ってる」

 

ランプ「まあ、いい。大事なことは、私たちの敵が現れるということだけだ。

     仔細などどうでもいい」

 

 (死体のように無表情だったランプの顔が、徐々に生気を帯びてくる)

 

ランプ「敵……そう、敵だ……なんと甘美な響きだろうか。

     私はかねてより、その存在を待ち望んでいた。

     その暗黒の輝きさえあれば、この朽ちた体はいくらでも甦ることができる。

     ああ、喜ばしいとはまさにこのことだな」

 

ペンチ「……敵が現れることが、そんなに嬉しいの?」

 

ランプ「寝たきりの私に、ようやくそれらしい仕事が与えられるのだ。

     嬉しくないわけがない」

 

 虚ろを見つめ、ランプは呟く

 

ランプ「早く、戦いたいな」

 

ペンチ「こんな形でも、ランプが希望を見出してくれたことが私は嬉しいよ。

     そんなに元気な顔を見たのも、一体いつだったか……」

 

ランプ「ああ。これから、どんな風に敵を殺すか話し合おう」

 

ペンチ「――だっていうのに、私は今からランプを傷つけるんだ」

 

ランプ「ペンチ?」

 

ペンチ「ごめんね、ランプ。私は君をここに磔にしなきゃいけない」

 

ランプ「なんだ、お前、何をしている」

 

ペンチ「君が動けないようにするためのおまじないだよ。

     呪言(じゅごん)の王としての私の能力は、対象の動きを制限するものだから」

 

ランプ「……!」

 

ペンチ「……最強の王たる君に勝手に動かれるとみんなが困るんだ」

 

ランプ「お前は、ようやく希望を見出した私から、それを取り上げるつもりか」

 

ペンチ「私を恨んでいいよ。君にはその権利がある」

 

ランプ「ペンチ、この呪いを解け! 今すぐお前を八つ裂きにしてくれる……!」

 

ペンチ「ごめん。ごめんよ。苦しいよね……

     でも、それは私も同じなんだ。

     私だって、やりたくてこんなことやってないんだから……」

 

ランプ「解せぬ、解せぬ、解せぬ……! 気が狂ったか、ペンチ!」

 

ペンチ「許してくれなんて言わないよ。

     だけどせめて、私がこうしなきゃいけない事情だけは聴いてほしい」

 

ランプ「知ったことか! 悪魔の戯言を聞く耳は私は持ち合わせておらん!」

 

ペンチ「お願いだよ」

 

 (唸りながらも、ランプは罵詈雑言を止める)

 

ペンチ「ありがとう。

     君はとても聡明だから、ただ怒りをぶつければいいわけじゃないってこともすぐに理解してくれる。

     私は君のそういうところが一番好きなんだ」

 

 

ペンチ「君の体にはね、七人の王の中で唯一、ある制約が課せられている。

     君はそれを病弱な体質だと解釈していたようだけど、実際は違う。

     それは怠惰という、抑制機構なんだ。

     私たちにはそれぞれ、七つの属性が与えられていて、

     そのうちの一つである君の怠惰には、

     君の体を不自由にする呪いのような機能がある。

     これはね、君が最強の王だからこそ存在しているものなんだよ。

     君の魔力総量は他の王と比べて、実に七倍もの差異がある。

     つまり、つまり最強の王というのは、何の比喩でもない、事実なんだ。

     七人の不死の王のうち、正真正銘の最強の王が君だ。

     君以外の六人全員を足したところで君の強さには及ばない。

     きっと君なら、どんな襲来者だって殺してくれるだろうね……。

     だけど、君には致命的な欠点もあるんだ。

     私たちの七倍強い分、回復するのがとても遅いんだよ。

     もし君が、何らかの戦いで力を使ってしまった場合、およそ七日間は全く動けなくなってしまう。

     気絶したように寝込んでしまうんだ。

     君が力を回復している間、君以外に倒せない襲来者がやってきた場合、

     この世界はなす術もなく滅び去る。

     ……だから君には、最強の襲来者に備えて力を蓄えていてもらわなくちゃならない」

 

 (ペンチは座り込み、ランプの手を取る)

 

ペンチ「怠惰だけでも君の行動を制限するのに十分なはずなのに、君は動こうとした……

     君の奉仕欲は底なしだ。

     きっと、王の中で一番、人間に尽くしたいという欲が強いんだろうね。

     だから私は、私の能力で君をこの場所に封じておくんだ」

 

   ペンチ 「君の親友はね、君を殺すためにここにやってきたんだよ」

 

 (ランプはしばらく何も言わなかった。驚きと悲しみと憎悪とが混ざって、何をどう言葉にしていいかさえ分からなかった)

 

 

 (どれだけの沈黙が流れたか。すっかり落ち着きを取り戻したランプは言葉を紡ぐ)

 

ランプ「私が病人になる前のことを覚えているか」

 

ペンチ「今よりもずっと明るくて、国民とも親しかったね」

 

ランプ「ああ。光の時代だ。

     私の体は今ほど錆びることなく、今のように王室に引きこもることもなかった。

     自由に動かない体と格闘しながらも、いろいろな場所へ向かい、時には旅もしたものだ。

     あの日々は、私にとって太陽の時代と言えた」(独り言のように語っている)

 

ペンチ「ランプ」(心配になって名前を呼んだ)

 

ランプ「私は国民を愛していたし、国民もまた私を愛してくれていた」

 

ペンチ「……」

 

ランプ「私の原点。あの時の私がいたからこそ、今の私は未だ朽ちずにいる」

 

 (ペンチは黙って聞くことにした)

 

 

ランプ「私はかつて、世界の旅人と呼ばれていた。

     世界のあちこちへと飛び回って、この世のありとあらゆる景色を見て回った。

     世界の中心にあると言われる私の国だけでなく、私の国を囲む六つの国についても、隅々まで踏破したつもりだ。

     私はおよそ全ての道を歩き、全ての人間を見てきた」

 

ランプ「新しい景色を見ることが、当時の私の最大の楽しみだった。

     道を歩くということは、それだけ国民と多くの接点を持つことにつながるからだ。

     だから私は、どこの国のどんな場所にさえも足を踏み入れた。

     そこにまだ見ぬ景色、人間を求めて」

 

ランプ「しかし、そんな日々はたった一つの出来事によってことごとく破壊されてしまった」

 

ランプ「きっかけは些細なことだ。

     王様の力を見せてほしいと、名も知らぬ子供にせがまれてのことだった。

     私は国民を集め、今まで明かさなかった私の魔力を発動した。

     私のことを少しでも、国民に知って欲しかったからだ。

     私はこういう存在でもあると、理解してほしかった」

 

ランプ「だが国民たちは、私の思惑とは裏腹に、私の力を恐怖した。

     まるで魔物でも見るような目を向けた。

     その時私は理解してしまったのだ、

     王と人は、けして融和できないのだと。

     私がどれだけ恐ろしい存在なのかを、他でもないこの私自身が認知してしまった」

 

ランプ「病人として床に伏すようになるのは、その直後だ。

     私は国民に存在を否定されたことで、ありとあらゆるものに対する関心を失った。

     世界を見て回ることにも、意味を見出せなくなった

     この足で歩くことに何の価値も感じられなくなった」

     

ランプ「何故なのだ。

     私は一度だって、愛する国民を攻撃などしなかったというのに」

 

ペンチ「王に力があることは、みんな漠然と知ってはいたんだよ。

     だけど、それがどういう意味を持つかまでは、想像が及んでいなかった。

     最強の王の称号が嘘偽りでないとね」

 

ペンチ「強大な力を崇めるには、世界はあまりに平和すぎたんだろうね。

     力にふさわしい敵がいなかったために、

     君の力は本質とはかけ離れた意味を持つようになってしまった。

     ……魚をさばくのに剣はいらない。

     なぜなら、この世には包丁という、もっと便利で使い勝手のいいものがあるからだ。

     道具にはそれぞれ適材適所があって、

     もしも用途に合わない使い方をすれば、きっとその人は怪我をしてしまうだろう。

     これは、人間たちの間に広まる知恵のうちの一つだ。

     君という存在は、この例えのうちの剣なんだよ。

     台所にある剣、病室の毒薬、火薬庫のマッチ……

     本来そこにあるはずのないものに、人間は違和感を覚え、

     時に恐怖さえ覚えるんだ。

     それこそ、森を歩いていたら、クマに出くわしてしまった時のようにね。

     ……悪魔という、襲来者とは別の敵が既に世界中に散らばっていたのも良くなかったね。

     君の力は、本来襲来者と関連付けなければならないのに、

     人間たちは悲しいことに、悪魔と結びつけてしまった。

     人間を守護するための力ではなく、

     人間を攻撃するための力なのだと思ってしまった。

     事実として、君がその気になれば、人間たちは一瞬で全滅なんだから、

     君を恐れるのも無理ないよ」

 

ランプ「だが、しかし、そのせいで私は、国民との間に絆を結べずにいる」

 

ペンチ「ランプはそれを求めてるの?」

 

ランプ「そうだ。ペンチのように、国民から慕われたい。

     キセルのように、なれなれしく国民と話がしたい。

     プラスは国民に思い入れがないようだが、それでもプラスは王として国民に尊敬されている。

     しかし私は」

 

ペンチ「ランプには、ランプにしか勤まらない役割があるんだよ」

 

ランプ「義務のはずの戦いに加わらず、ただ寝ているだけのことが仕事だと。

     ふざけている」

 

ペンチ「望んで手に入れた力じゃないんだ、君の気持ちはよく分かる」

 

ランプ「わかるなどと、軽率に」

 

ペンチ「わかっちゃいけない?」

 

ランプ「お前は私と同じ境遇にはいない。孤独ではないだろう」

 

ペント「そんなことないよ」

 

ランプ「お前に何があるというのだ」

 

ペンチ「誰も持ってない知識を抱えてる。

     誰も知らない真実を、私だけが知ってる。

     私は何でも知ってる呪言の王なんだ。

     私が王として与えられた、膨大すぎる知識を、できることなら君も覗いてみればいいよ。

     きっと、耐えられなくなるだろうから」

 

ランプ「……取り乱した、すまぬ」

 

ペンチ「いいんだよ、怒っても。出せる感情はどんどん出したほうがいい。

     でなきゃ、そうしなきゃ、怒り方を忘れてしまうかもしれない」

 

ランプ「そんなことがあるのか?」

 

ペンチ「ないとは言い切れないよ。特に君は、人との会話が圧倒的に足りていないから」

 

ランプ「……好きで、距離をとっているわけではない」

 

 涙声だった。

 

ペンチ「わかってるよ。ランプも私と同じで、人間が大好きだってこと」