虹があまりにもきれいに見えたのは(ママ9月の病院) | 阿蘇の国のクララ

 

9月4日(月)...

 

ボワ・ジョリ

 

ママは週一、ボワ・ジョリで

まるで給油するかのように

珈琲を飲み、甘いパンをかじります。

 

長居はせず、さっと飲んで、

ぱっと出かけていきます。

 

「クー、バレリーナさんが欲しんだって♪」

 

「きれいなうちにあげようね♪」「クー♪」

 

ボワ・ジョリを後にするとき、

これでもう少し生きられる...

 

そんな顔をしています。

 

やはりママはボワ・ジョリから

力をもらっているんだ。

 

9月5日(火)...

 

ママ

「クーちゃんは家にいなさい、

風が強いから」

 

最大瞬間風速、

阿蘇20.1m、南阿蘇16.8m。

 

台風の中、ママとパパは病院に向かいました。

 

パパ

「道、空いてたね。最短で来た」

 

時刻は11時を少し過ぎたところでした。

 

パパ

「採血とレントゲンだけだから、早く終わるよ」

 

パパ

「...終わったら、何食べたい?」

 

パパ

「腕貸して。

採血が痛くないよう、

おまじないをしてあげる」

 

パパが喋りまくっているうちに

次第に重苦しかった空気がほどけてきました。

 

ママ

「...痛くなかった♪」

 

ママ

「...早く終った♪」

 

時刻は12時を少し過ぎたところでした。

 

蔵人珈蔵

 

2015年2月にステージ4の

肺がんと診断された後、

ママは月に1度、

レントゲン撮影、血液検査。

 

半年に1度、

CT撮影、MRI検査を受け、

治療方針を確認しています。
 

2018年、全脳照射、

2022年、ガンマナイフと

放射線治療を受けました。

 

首から下の部分、

肺がんの原発巣やリンパ節転移については

分子標的治療薬(アレセンサ)の

奉功もあって、落ち着いています。

 

問題の脳の転移巣については、

2つ残ったままです。

...大きくなるまで待つそうです。チッ!

 

ママ

「見て、虹...!」

 

あのとき夕方の光の中で

虹があまりにもきれいに見えたのは、

やっぱり命のことを考えたからでしょう。

 

死ではない。命でした。

 

命の流れは日常の中では

ひっそり沈んでいて、

ひとたびなにかあれば、

まるで龍が水から勢いよく

上がってくるみたいに姿を現す。

 

私たちはびっくりするけれど、

こんなにも毎日が

冒険であることを思い知る。

 

「...アリスパパ、足くじいちゃった」

 

「痛い...」

 

「電話してあげるね」

 

※翌日は普通に歩いていました

 

9月7日(水)...

 

パパ

「ママ、山に登ろう!

台風が去った後の山は美しいよ♪」

 

まさか病院の翌日に

九重連山に登るなんて

予想もしていませんでした。

 

ママ

「クーちゃんと冒険してみようかな♪」

 

「クー!」

 

「ママ...、山頂!」

 

 

ママは龍のごとく、

星生山の頂に立ちました。

 

「ママはアリスそっくりに生きている」

 

パパが顔を上げて言いました。

 

「星が生まれる山なの♪」