そろそろ、帰らなきゃ... | 阿蘇の国のクララ

 

「アリス~!迎えにきたよ~♪」

 

杵島岳

 

「ママ...」

 

ユメノクニノアリス

 

アリスおねえさんの声が

聞こえたような気がしました。

 

「テヘッ...ただいま♪」

 

「照れちゃって♪夢の国では何してるの?」

 

「自由に空を飛んでる。

ママのこともちゃんと見てるよ♪」

 

「アリスを毎日思ってるよ...」

 

「私も、同じ気持ち...」

 

「アリスを毎日愛してるよ」

 

「私も、永遠に愛してる」

 

「そろそろ、帰らなきゃ...」

 

「それじゃ、行くよ。クララ、ママを頼んだよ」

 

8月15日(月)...

 

「クー」

 

箱石峠

 

「きょうは、星生山まで登って、

アリスを見送ろう」

 

「クー」

 

瀬の本高原

 

「クー...、ガスで前が見えないね。強風だし」

 

「とにかく、上れるところまで行ってみよう」

 

牧ノ戸峠、午前7時

 

星生山1,762m

(くじゅうさんほっしょうざん)...

歩行時間3時間30分、

走行距離6.7km

 

私はパパの後に続きながら、

半年ぶりの登山道を、

一歩一歩、肉球で感触を

たしかめるように歩きました。

 

生きている。

 

私の心臓は、懸命に動いている。

 

パパはアリスおねえさんに語り続けていました。

 

「僕達、たくさんの道を歩いたね...」

 

「毎日、僕は楽しかったよ」

 

パパが泣き笑いの表情で言いました。

 

「もっと抱っこしたかった」

 

ほんとうに愛している者同士が

別れるときは、

心からつらくても

なにかとても

温かいものがあります。

 

それこそが

愛の感触なのかもしれません。

 

「クー!」