良かった、今日も生きてる | 阿蘇の国のクララ

 

2月11日(金)

建国記念の日...

 

まぶしいほどの午後の日差しです。

 

もう春の気配に満ちた光...。

 

フクジュソウ...

 

思わず微笑んで、

春を告げる植物を見つめました。

 

「...一つはジャスママさんでしよう?」

 

「一つはここでいい?」

 

 

「ママ...」

 

「オイデ、メジロちゃん♪」

 

ママが鳥の言葉を話せるかのように言って、

ミカンを切って庭の木の枝にさしました。

 

パパとママは、

私を飼いはじめて、

生きものに対しての見方が

変わったそうです。

 

庭に来る鳥も、虫も。

 

あか牛も、シカも、キツネも、

みんな愛らしく映るようになりました。

 

いつの頃からかヤマメ釣りもやめてしまいました。

 

清栄山

 

「ママ...、まさか登るの?

頭、痛いんでしょう...」

 

「うん。パパが登るよって」

 

「じゃあ行こうか、クララ」

 

「モコたんかーさんから...」

 

 

クララママ、お具合はどうですか?

 

治療が始まるんですね。

 

又、辛いことがあるね。

 

絶対がんばって。

 

今度も必ず通り抜けられるから。

 

「モコたんかーさん、ありがとうございます。

パワーストーンブレスレットを今から付けます」

 

 

「かーさん、元気?」

 

ユメノクニノティアラ

 

「半分来た」

 

「クー」

 

「ここからが、急登」

 

行こうか、とママが私の肩を叩きました。

 

 

「ママ、もう少し!」

 

阿蘇の国のアリス

 

「シホさんからも...」

 

このお守りの力は本物なので、

ママ、そして一番近くで

ママのために頑張ってくれる

パパの健康も大切なのでペアで...

 

「シホさん、離さないよ」

 

「シホさん、チャコちゃん、ありがとう♪」

 

南郷谷

 

「良かった、今日も生きてる~!」

 

清栄山山頂

 

きっと、こんな日常は異常で普通じゃない...

 

自然と涙が頬に流れました。

 

弱さや不安が喉もとまで出かかりました。

 

クッとこらえて必死に言葉をのみ込みました。

 

心にぽっかり空いた穴は、

日に日に大きくなっていきます。

 

それは少しずつ

大切ななにかが奪われていく感覚に似ています。

 

「クー...」

 

「私...、もっと、生きたい」

 

「ママ...」

 

前脚でゴシゴシ涙をぬぐい、

必死に歯を食いしばりました。

 

「ママは死なない!

助かるに決まってるでしょう」

 

誰だって、

死ぬ覚悟なんてきっといつまで経っても

もてるはずなんてない。

 

私は思いっきり抱きついて、

ママの胸に顔をうずめました。

 

「...クッー!」

 

来週から、

ママの放射線治療がはじまります。

 

読んでくださいまして

ありがとうございます。