声は届いているというので、話しかけ続けた。
あるとき、突然目を開いた。
私は急いで、
「来たよ、私だよ、心配だから急いで来たよ
もう大丈夫だよ」
なんの反応もなかった。
嘘だろと思った。だって、目は開いているのだ。
でも話すことはもちろん、頷くことも、表情も変えることもなかった。
抜け殻じゃないかと、思ってしまった。
寝返りをうったりできた。
手や足を動かすこともできた。
でもそれは無意識なものかもしれなかった。
自分についているチューブやコードを
抜こうとし続けたりしていた。
私が手を握っていても、それに気が付いているのかも分からなかった。
その姿にただただ涙がでた。
意識があると聞いていた。
だから、寝ていることが多いとはいえ、
目が開いているときは受け答えができると勝手に信じていた。
でも現実は違っていた。
勝手に信じていたせいで、余計にショックを受けた。
口は半開きで、涎が溢れ出ることもあった。
22歳の元気な男性とは思えない姿だった。
その寝相だけはいつもと同じで、
いつもの位置に手があり、いつもと同じ膝の曲げ方だった。
それが、余計に哀しい。
早く、いつもと同じ口調で、私に話しかけて欲しかった。
いつもの笑顔が見たかった。
いつもの温かい手で不安を握り潰いで、
私と手を繋いでほしかった。
ただ不思議なのは、
彼の好きなところ、として今まで考えていた部分すべてが失われた今でも
大好きなひとだと思えたこと。
好きなところ、って一点一点の集合体だと思っていたけれど、
そうじゃなくて、
波のようなものだと思った。
好きって光のようなもの、なんだなあ。
私からの好きな気持ちが
彼のなかで輝いて、
少しでも早く、意識がはっきりしてくれたら、と
神様に、なんとも自分勝手なお願いをしてしまった。
