先日のブログでのお出かけ先・そのさん。
シネマ歌舞伎×2本、見てきました!
野田版「鼠小僧」「研辰の討たれ」
どっちもすごく面白かったです。
3日まで、丸の内ピカデリー@有楽町で再上映してるので、是非見て欲しいです。本当に面白かった。見ないと本当に損だと思うよ!
以下感想。
ネタバレ嫌な人は避けてください。
読む方に注意。
私は、文学の解釈って本当に出来ないんです。野田さんの作品は基本的に文学だと思うので、私にはそれを深い意味で読み解くだとか、メッセージ性を感じて受け取るだとか、そういったことが出来ない。
でもそれを踏まえた上で感じたことを、書きたいように書いてみる。
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「鼠小僧」
まずは歌舞伎役者さんってみんなものすげー上手いよね。そりゃあ物心ついた時から何十年もやってるだけあるというか、こんなにも安心して見られるって、ものすごいことだと思うのよね。女形の人はナチュラルに女に見えるし、何よりお美しい…ほぅ(*´∀`*)
そして何より、主演の勘三郎さんがものすごいパワフルでした。どっちもこの人が主演だったんですが、そりゃあ汗だっくだくになるわ!って納得するほどの運動量…。それでいて長台詞の数々…。演技もものすごい。まさに主演にふさわしい、この人あっての舞台でした。
あ、一人名前が歌舞伎の人じゃねえなと思ってたら子役でした。重要な役だったけど、歌舞伎の家の子を持ってこなかったのか…と少し驚いた。だってこれ歌舞伎座の公演だったし。
歌舞伎=観客との一体感、が特徴的だなーって思っているのですが、歌舞伎のお客さんって温かいよね。掛け声はバッチリ入れてくるし、笑いどころではきちんと声を出して笑ってくれるし、その後すぐにセリフが始まったらそっこーで静かに聞いてくれる。なんて素敵なお客さんなんだろう、と思うよね笑
野田版歌舞伎では、そうした歌舞伎特有のエンタメ感(お客さんとの一体感)と野田さん特有の文学性が上手いバランスで配合されていた感じです。いつものNODAMAPは「わかんねーよ!」と正直思うのですが笑、それに比べたらかなり分かりやすいし、エンタメ性があって誰もが楽しめるようになってるかと。
ベースは歌舞伎なんだけど、かなり現代劇にアレンジされてる…というか、歌舞伎の型で中身は現代劇って感じ。なので、「歌舞伎とかわかんないし」って人も安心して観れます。
概要としては、棺桶屋・三太とその周囲のドタバタコメディ。ドケチの三太と個性的な面々がわいわいやって笑わせてくれます。ひょんなことから三太は世間を賑わせる鼠小僧になるのですが、とうとう捕まってしまい…って感じでしょうか。
装置の話。
雪が、すごかった笑
ものすごい降らせてたなあ…一回の公演であれだけ大量に降らせてるんだから、どんだけ紙切ったんだろう。いつも思うけど、野田さんの公演は、舞台さんが大変そうな仕掛けがたくさんです笑
本番中の操作も含めて、裏では毎公演が修羅場だったんだろうな…。
中身の話。
真実が真実になることは、当たり前じゃなくてすごく難しいことなのかもしれない。善人が幸せになるとは限らないし、悪人が不幸になるも限らないし、善人じゃないからって悪人とも限らない。
三太が捕まって、そこで語った真実は、真実にならなかった。
悪人達は、誰一人として不幸にはならなかった。
きっと現実にはありふれてる話。
三太は善人じゃないし、どっちかというと悪人の部類なんだけど、でもチビ三太の救いにはなれたんじゃなかろうか。彼にとっての「サンタさん」にはなれたんじゃなかろうか。
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「研辰の討たれ」
こっちの方がコメディ要素が強かった…というか多かった?
鼠小僧は、前半→コメディ・後半→シリアスとハッキリしてたけど、こっちは終始コメディっぽかったかも。もちろん、本当のどラストは真面目なんですけども。
概要。
赤穂浪士の討ちいりの事件で、世の中は仇討ちブーム。
そんな中、赤穂浪士を馬鹿にする研ぎや上がりの武士・辰次の話。
彼は、お偉いさんに媚売ったり調子の良い屁理屈をこねたり、楽をして暮らしていきたいというような、いかにもダメな武士です。ある日、剣術で痛い目に遭わされた家老を、復讐としてちょっと脅かしてやろうとします。が、なんと心筋梗塞(だったかな?)で亡くなってしまいます。結果、彼は家老の息子×2の「仇」になってしまい…という感じ。
中身の話。
武士の時代の考え方って、本当に現代人には理解できない範疇なんだなあと思う。仇討ちがブームなのもよくわからないし、家老の息子二人は、本人達が戸惑ってるのに、すごいチャンスがやってきた!とばかりに周囲の人に盛大に送り出されて、何年も国を離れて辰次を探す旅に出る羽目になるし。
そもそも、辰次の脅かしが原因かもしれないとはいえ、直接の死因は違うわけで、それを「殺し」に偽装した周囲がいたわけで、そうすると仇討ちと人殺しは、何が違うのだろう。
鼠小僧の時も感じたけど、研辰の方でより感じたのは、民衆の怖さ。
仇討ちをする人間と知れば態度を一変させてチヤホヤし、討たれる側と知ればひっ捕らえて仇討ちを執行させようとする。両者が対峙すれば、仇が殺されるのをただワクワクしながら見て、なかなか進まなければ殺せと声を上げてけしかける。結局遂行されなければ、「なーんだ」ともう興味はないとばかりに散り散りになって去っていく。
その異様な雰囲気が、ものすごく怖かった。
関係の無い他人であれば、生き死にすら娯楽になってしまうんだなあって。
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まあこんな感じでした!
3日までだからね、見逃さずに行くと良いよ!(・∀・)