いまサントリー美術館で開催中の展覧会「歌枕 あなたの知らない心の風景」のキャッチコピーを見て、ゴダイゴの「ガンダーラ」を連想しました。いつ聴いても、憧憬や寂寥感、無常感など、さまざまな感情を喚起させる名曲です。

ガンダーラといえばシルクロードですが、神坂智子さんのシルクロードシリーズは、SFとしても、歴史物としても、人間ドラマとしても味わい深い希有な作品です。
「ヘディンの手帳」に収載されている絨毯をめぐる連作のうち、敵国から攻め入られ一人生き残った王女の話が忘れられません。
王女に生まれながらも王女の気概はなく、一人生き残って途方にくれるのですが、自分にできるのはただ生きることだけ、と王女としてではなく市井の人間として生きることを選びます。

周囲や立場が期待するものを自分が持っていないと気付いたとき、期待に応えようと無理をするのではなく、自分にできることを見定めて実行するのは難しいことだと思います。
ただ生きる、ということの尊さ、重さを考えさせてくれる一篇です。