ある日。
家の前だけだから…と、
リードをつけず、
あおを肩に乗せて歩いていたときのこと。
街灯の下に、
ふと野良猫が現れました。
あおの身体がピンと固まり、
その猫をじっと見つめました。
私は行かせないようにしっかり抱えていたのですが…
その野良猫があおをじっと見つめたあと、
すっと背を向け、
ゆっくりと歩き出したのです。
その瞬間、あおは私の肩から飛び降り、
猫のもとへ走っていきました。
匂いを嗅ぎあうふたり。
その猫は、
まるで「こっちへおいで」と誘うように、
少し先へ進んでは振り返る。
あおもそのあとをついていこうとしました。
私は思わず叫びました。
「あお!!行かないで!!」
「戻ってきて!お願い…」
すると、
あおは立ち止まり、
振り返り、
私としばらく目を合わせました。
そしてそのまま、
その猫のあとを追って歩き出したのです。
まるで、
「おおかみこどもの雨と雪」のワンシーンのようでした。
止めようと思えば止められた。
でも、
あおが”自分の世界”を望むのなら、
私はその自由を奪いたくなかったのです。
その夜は、一睡もできませんでした。
猫の集会があるのか、
いじめられてないか、
女の子なのに大丈夫か、
どこで眠っているのか…
不安で、不安でたまりませんでした。