7月2日 14:44 本部
俺たちは赤色の円盤の相手にしていた。
数は僅か十機。本来ならば手頃な相手として等しい数だ。
そんな手頃な相手に俺たちは今、苦戦している。
「そんな情報は早く伝えろよ!」
俺は今になって敵の正体を知り得た。
『そんな事言ったってこの情報は今来た情報だ!』
「くそっ…」
12:00 市街地
それは、時也たちが十機の赤色円盤を相手にする数時間前の事だった。
市街地には既に人の姿が消え失せており、その代わりに自衛隊とEDFがその市街地に集結していた。
建物の屋上には対空砲と対空ミサイルが集結中に何基か組み立てられ、路上には戦車と装甲車、対空車両が陣形を整えていた。
余談だが、ここに敵が接近している情報は入っていないが、上層部はこれ以上の街の破壊を阻止する為に市街地防衛作戦を展開していた。
『敵は必ずここを潰しに来るはずだ。これ以上は奴等の破壊行為を許すなよ?』
『こちらシザーブロス了解。』
防衛体制は順調に整われ、迎撃するには強固な姿勢を見せている。だが、彼等はこの強固な陣形がたった数機により一瞬にして崩されることをまだ知らない。
「敵の反応…たった数機…?」
早速レーダー車両が敵の反応を察知した様だ。そして彼等は何かが可笑しい事に気づいた。
「隊長。敵がレーダー圏内に入りました。しかし…」
『こちらゴブリンテイル。どうした?』
「敵の反応が円盤十機。数えられる程度の敵がこちらに接近中です。」
『数えられる程度?巨大生物が来てるんじゃなかったのか!?』
『こちらバスター24。ジョークなら家帰って言え!』
「ジョークで通じるなら戦争なんて一時間で終わりますよ。」
『対空砲は迎撃に備えろ!』
対空ミサイルは敵が接近している方向に砲台を向けた。
一方十機の円盤はスピードを徐々に上げて市街地に接近していた。
「射程まで残り50マイル!」
『迎撃準備!』
円盤が射程距離に入ったと同時に対空ミサイルは円盤に対してミサイルを発射した。
ミサイルは徐々に円盤と距離を縮める。もうすぐ着弾する所で思わぬ事態に遭遇した。
「ミサイルを…避けた?」
通常の円盤は地上部隊のミサイル攻撃を受けたら着弾して沈黙すると情報が伝えられている。
今回の敵はその情報を間違いであるかの様にミサイルを避けた。勿論ミサイル二発程度の攻撃を受けた円盤も居たが、何事もなく市街地へと接近していた。
「攻撃が…聞きません!」
彼等が相手にしようとしている円盤は確かに円盤に変わりはない。ただ、この円盤は何かが違う。
地上部隊は対空砲で攻撃を仕掛けるが、円盤による電撃により破壊された。
「こいつ!次から次へと戦車を破壊してやがる!」
円盤は素早い動きと多彩な攻撃で数多くの戦車を次々と破壊。地上部隊には成すすべもなかった。
すると今度はもう一機の円盤はある動作をした。下部に位置する四台の砲台から放たれる放射線を中心に収縮し、一定量まで溜められたそれはレーザーとして放たれた。
レーザーは飛行中のヘリを次々と撃墜。遠距離に位置するヘリですら撃墜される始末に陥った。
「来るな…来るな…来るなぁ!うぎゃっ」
隊員は装甲車の機関砲でゆっくりと近づく円盤を攻撃するが、円盤には全く効いておらず隊員は敵の粒子砲により射殺された。
地上部隊は壊滅し、唯一残った無抵抗の対空砲に対して容赦ない集中砲火を与えた。
14:45 市街地
俺は赤色円盤による追撃を振り切って建物内に逃げ込んだ。
『それじゃあ敵円盤についての説明をするぞ。敵は…』
正司は敵円盤について説明を始めた。
赤色の円盤は『エース・ファイター』。精鋭の名の通り、今までの円盤とは違い動きと攻撃、防御が違う。
敵は今までとは異なった攻撃方法を出して来る。レーザーを元より、粒子砲と電撃も繰り出して来る。
レーザーについてはパターンが三つあり、一つは従来の円盤通りバルカン型。もう一つは戦車などを破壊する為の近距離型。最後は遠距離の敵を攻撃する為の長距離型。
動きは従来の円盤と違い、機動力が全く異なる。防御力もそうだ。まぁ防御力は関係ない。攻撃を続けていれば何時かは墜ちる。
『晴斗と瑠璃華が開発部から受け取ったライサンダーFとソルリングA20を持ってそっちに向かってる。』
(開発部か。また変なもの作ってないだろうな…)
俺が今持っている武器はAS-21Dと言う威力重視のアサルトライフルとエメロードMと言うミサイル兵器。
一方精鋭円盤は時也が建物内に居る事に気付き、レーザー、粒子、電撃と言った多彩な攻撃で集中砲火を仕掛けた。
「集中攻撃とは…とんだイジメっ子集団だ。」
攻撃が止むと俺はAS-21Dで一機の円盤を攻撃した。勿論それで倒せる筈がない。
周りを見れば無惨な姿へと変わり果てている。先ほどの集中攻撃が原因だろう。
俺は手榴弾GHG-17を円盤に投げ付けた。こいつは時間式の手榴弾だが時間の猶予が無い為、AS-21DでGHG-17を撃つ。手榴弾は爆発し、円盤はその攻撃を喰らった。
俺はその隙に建物から脱出。再び追撃されるハメに陥る。俺は距離を開くよう、AS-21D、エメロードMで奴等の追撃を阻んだ。
逃げる事数分、エメロードMの弾薬が底を尽きて対処法が一つ失った。
「晴斗と瑠璃華は何時になったら来るんだ!」
早く来ないとこっちが危ない。
『時也、随分手こずってる様だな!』
『私たちが来たからにはもう大丈夫よ!』
噂をすれば二人の声が聞こえた。やっと到着したか…。
晴斗は遠距離から精鋭を狙撃する位置に陣取り、瑠璃華はエアバイクを操作して時也に近づいた。
晴斗はライサンダーFのスコープで精鋭を覗き込み、狙いを定めると引き金を引き、放たれた弾丸は精鋭の装甲に着弾。運良く急所に当たり、精鋭は一発で破壊されて空中で爆発した。
もう一機も先ほどの狙撃を喰らうが、撃墜に至らず晴斗の存在に気づいた。精鋭は晴斗の方へ向かおうとしたが、真下に居た時也がAS-21Dで留めを刺した。
瑠璃華が装備するソルリングA20は全弾発射のミサイル兵器。彼女は一機の精鋭に狙いを定めて引き金を引く。発射されたミサイルは精鋭を追尾。ソルリングA20の追尾性能は高く、避ける精鋭に対して執拗以上の追尾を行う。全方向から追尾に振り切れず、精鋭は攻撃を受ける。20発のミサイルを喰らった精鋭は成す術もなく撃墜された。
その後も次々と精鋭を落として行き、残る精鋭は一機のみとなった。
「さっ、これで最後よ!」
瑠璃華はソルリングA20で最後の精鋭に狙いを定めては引き金を引く。20発のミサイルは精鋭に向かって追尾を行う。
一方精鋭は四台の砲台から放射線を放ち中心に収縮、長距離レーザーを放った。その行先は20発のミサイル。精鋭はレーザーで迫り来る全てのミサイルを撃墜した。
「そんな!」
彼女が放ったミサイルはそれが最後だった。精鋭は彼女に対して長距離レーザーで反撃を仕掛けた。
「誰か援護して!」
『分かった!俺があいつを撃墜する!』
晴斗はライサンダーFで精鋭に狙いを定める。しかし…
「なっ、何故発射されない!」
晴斗は何度も引き金を引くが、銃弾が放たれる事は無かった。
「こんな時に故障かよ!」
晴斗は狙撃ができず、瑠璃華は長距離レーザーに追われるハメになる。
瑠璃華はエアバイクを操縦してレーザー攻撃を必死に振り切っていた。精鋭は降下して瑠璃華を追撃する事にした。
偶然近くに居た晴斗は精鋭に対してスパローショットM3ショットガンで精鋭を攻撃。精鋭は晴斗に目もくれず瑠璃華を追撃する。
瑠璃華と精鋭の距離は徐々に縮まり、精鋭はバルカン型レーザー砲で攻撃。瑠璃華はAS-20で精鋭に反撃を仕掛ける。
やがて武器は弾切れになり、装填する暇がない彼女はその場に武器を放り投げた。
『瑠璃華、俺の声が聞こえるか!?』
「時也、助けて!敵に追われてる!」
『分かった。大通りまで来てそこを右に曲がれ!』
瑠璃華は時也の言う通り、角を右に曲がり大通りへと出た。
『そのまま真っ直ぐ走れ。』
一方時也は大通り近くの建物の屋上に居た。
(もう少し…もう少し…今だ!)
すると時也は屋上から飛び出して、低空を飛ぶ精鋭目掛けて機体上部に着地した。
「さぁて、流石のエースでもセロ距離から弱点狙われたら…」
時也はAS-21D二丁で精鋭のコックピットを集中攻撃。弾薬を全て与え、三度の装填の末、
「ただの雑魚同然だ。」
精鋭は機能を失い大通りの路上へクラッシュ。火を噴いて爆発した。
「ふぅ…終わった。」
俺はため息を吐いて炎上した精鋭から離れて行く。その向こう側から瑠璃華が近付いて来た。
「時也。大胆な仕事だったわね?」
「一度やってみたかったんだよな~。」
俺は先ほどの行いを思い返しながら彼女に返事を返した。勿論、さっきの行いが『やってみたかった』なんてのは冗談だ。
「晴斗、ライサンダーFの状態はどうだ?」
『どうもこうも、後で開発部に強襲攻撃を仕掛けてやる。』
「良し!じゃあ俺も開発部を攻撃してやろうか!」
「じゃあ私も♪面白そうだから♪」
その後、開発部は何者かの強襲により壊滅状態に陥った。
19:02 本部
正司は一人、会議室の椅子に座っていた。
一人しかいない会議室の各席には人の、各EDF本部の司令官、各国の軍司令官の姿がホログラムで再現された。
『マザーシップへの対処はどうしますか?』
『一刻も早く手を打たねば…』
『いっそ…核ミサイルでマザーシップを…』
『核でか?ふざけるな!』
司令官たちの口論を、正司は冷静に聞き取る事しかできない。彼自身は今のところ何も発言していない。
『総司令官!どうするか決断を!』
(ちっ、よりによって総司令かよ。)
正司は総司令のやり方を非常に毛嫌いしている。総司令からの決断はこうだ。
『…ミサイル兵器”タクティクス”を使用する。』
何でもミサイルで解決しようとする所だ。今までの緊急会議でもミサイルで解決しようと考えており、正司はそのやり方に毛嫌いしている。
(タクティクスを使ってどうする?今までの巡航ミサイル、弾道ミサイルは効かなかったんだぞ!)
今までマザーシップに対する攻撃は何度か行われたが、撃墜は愚か、損傷すら与えてすらいない。
総司令の決断に正司は意義を出した。
「異議あり。ジェノサイド砲でマザーシップを落とすのはどうですか?」
正司は司令官たちに自身の提案を出した。
『ジェノサイド砲でどうするんだ?あれは完成しておらんだろ!』
『大体ジェノサイド砲は輸送中に…』
「だから…ぶっ壊したジェノサイド砲が一本ここに在るからそれで作るんだよ!」
ジェノサイド砲は市民の避難誘導の際に全てを破壊。その内七本は米国へ輸送中、敵の攻撃により沈められる。正司は残った一本でジェノサイド砲を作ろうと提案している。
『日本で大丈夫なのか?作るにしても…場所はどうするんだ?』
日本には武器を有効に作れそうな工場は存在しない。その件で一人の司令官が指摘した。
「これ以上はここの本部の機密事項です。これ以上は話せません。」
『あぁ…おい!』
正司は総司令の呼び掛けを無視し、電源を切る。電源が切れたと同時にホログラムは消失した。
正司は部屋から退室し、携帯電話で連絡した。
「俺だ。研究員にジェノサイド砲研究の中止を知らせろ。」
こうして、ジェノサイド砲の研究は中止され、それを応用して武器開発の計画を練る事になった。
to be countinued
次回 神の雷