かつて私を育てた母はもういない。


認知症になって、身体という器だけ残して


消えた。


今あるのはただの生命体としての母。


同じようにかつて私が育てた娘もいない。


身体だけ残して消えた。


今あるのはただの生命体としての娘。


それでいいと思う。



私との記憶がない人たち。


私の存在を認識しているだけの人たち。


それでいい。


それでも親だから見捨てられない。


それでも子だから見捨てられない。


子供を育てさせてくれた神様には


感謝している。


可愛かったから。


愛する存在を授けてくださり、


育てさせてくれた。


子育てを私にさせてくれた。


ただ、私の思いもしなかった人格に


なっただけ。




違ってしまったのなら


仕方がない。



友人に使っていた言葉を


家族に使う日がくるとは


思わなかったな。



親は選べなかった。


この人が親で良かったと


思ったことはない。


しかし、愛情はあったのだと


かろうじて私のことを認識している。