2014年。アメリカ。"So Undercover".
  トム・ヴォーン監督。アラン・ローブ&スティーヴン・パール脚本。
 2013年の秋にマイリー・サイラス主演のドラマを楽しんで見ることのできる者は果たして存在するのか。かつてディズニー・チャンネルの『シークレット・アイドル・ハンナ・モンタナ』を吹替えの面白さもあり楽しんで見ていた人々も、『ハンナ・モンタナ』を遠い昔の懐かしい思い出に変化させてしまった現在、需要は少ないに違いない。お子さま向けのファッション情報誌で子どもたちの注目を集めていた時期もすでに過ぎ去った。マイリー・サイラスという名前に需要がないことを認識した上であえてDVDストレート、しかもレンタルのみという形で投入されたこのドラマは、配給会社からの悪意に満ちた挑戦状だ。

 しかし、楽しさを予感させる要素も少しはあった。ブレンダン・フレイザーとハリソン・フォード主演でわずかな面白さとかすかな感動をもたらした『小さな命が呼ぶとき』や、キャメロン・ディアズとアシュトン・カッチャー共演で案外と面白かった『ベガスの恋に勝つルール』のトム・ヴォーン監督が起用されている。脚本には『ウォールストリート』や『ラスベガスをぶっつぶせ』などを手掛けたアラン・ローブが参加するなど失敗しない体制は整備されている。
 物語が学園を舞台にした覆面捜査の刑事アクション・コメディだという点が最大のチャームポイントだろう。
 面白さを探し求めると、すぐにそれは見つかった、という点では優秀なドラマかも知れない。
    IMDB
 公式サイト(日本)

undercover01
 『ハンナ・モンタナ』で聞き慣れた白石涼子氏の吹替え版で見ようとしても、それは存在しない。製作に数百万円を要する吹替えはすでに回収不可能な企画だった。
 しかし、10月に発売されたニューアルバム『バンガーズ』が世界のみならず、日本でも初登場第1位を記録してしまった現在(iTunesのトップアルバムチャートに限る)、それは回収可能ではなかったのか、と思われなくもない。
 マイリー・サイラスの声は、アルコール依存症になった場末の演歌歌手のようなハスキーボイスだった。

undercover03
 マイリーに大学生になりすました覆面捜査を依頼するFBI捜査官のアーモンを演じるのはエミー賞受賞歴を持つジェエレミー・ピヴェン。アーモンはにせのFBI捜査官でなりすましの悪党だったことが後に判明する、という意外にひねった展開になる。

undercover04
 トライアンフのビンテージバイクを愛するジャズマニアの青年ニコラス(ジョシュ・ボウマン)とマイリーは恋に落ちる。かつてエイミー・ワインハウスの恋人であったこともあるジョシュ・ボウマンには複雑な心境にならざるを得ないキャラクターだったことだろう。

undercover02
 マイリーの父親を演じるのはビリー・レイではなく、『Glee グリー』でカートの父親役だったマイク・オマリー。ギャンブル依存症のためにダラス警察を解雇されて娘と一緒に私立探偵業を営むダメ父を演じる。
 『Glee グリー』では、義理の父親でもあったコーリー・モンテースについて、「あいつは撮影所でも最高のクオーターバックだったよ。」と故人をしのび、シーズン5での追悼番組にも参加したようだ。共演者が突然亡くなっても仕事を続けていかなければならないショービジネス業の過酷さが実感される出来事だった。

バンガーズ/SMJ
¥2,310
Amazon.co.jp
glee/グリー シーズン4 DVDコレクターズBOX (日本オリジナル・フォトブック付)/リー・ミッシェル,マシュー・モリソン,コーリー・モンテース
¥18,480
Amazon.co.jp