日本映画の将来を考えたコンテンツ・ファンドの分析を求む


平成17年ころから開始されたコンテンツ・ファンドの結果が出てきた。コンテンツ・ファンドは映画製作にかかわる中小企業の育成、若手クリエーターの人材育成を目的として、独立行政法人 中小企業基盤整備機構と民間の資金を提供するものだが、どれも厳しい結果に終わったと聞く。そして、多くの関係者は、日本では、構造的にコンテンツ・ファンドは馴染まないと言う。果たして、そうなのだろうか。やり方に問題はなかったのか。こう指摘すると、もう終わったことだから、傷口に塩をすりこむようなことはしないほうがいいのではと言われる。私が言いたいのは、責任の追及ではなく、結果の分析は必要ではないかということだ。そうでなければ、中小製作会社、若手クリエーターの人材育成に投じた資金は、本当に無駄になる。結果を分析し、次につなげることが必要ではないか。

02年に日本映画のシェアは外国映画に対してワーストとなる27%まで落ち込んだが、03年以降、急速な回復に転じた。その03年から昨年の08年までの日本映画界をたどってみよう。日本映画の公開本数は、この間に120本ほど増え、その中で、大手の増加は20本強で、多くは非大手で占められている。その背景には、外国映画の不振から、外国映画輸入配給会社の日本映画へのシフト、異業種からの日本映画の参入、そしてファンドの資金が投入されたことがあげられる。確かに、06年から非大手の興収は増えたが、そこにはワーナー映画の日本映画配給が含まれている。それでも、06年にはシネ・カノン・ファンドの「フラ・ガール」の14億円、また、アスミック・エースの「木更津キャッツ・アイ ワールドシリーズ」の18億円、「博士の愛した数式」の12億円と、非大手から興収10億円を超える作品が誕生したが、その流れは途絶えてしまった。非大手のパー・フィルム興収もワーナー映画の分を差し引くと4000万円前半になってしまう。この表を見れば、非大手が厳しい環境であることは一目瞭然である。

しかし、ここで、非大手が何故、大手に比べてパー・フィルムで圧倒的に劣勢となっているかを分析しなければ、中小製作会社、クリエーターの育成にはつながらないのではないか。よく、映画の流通、大手が巨大メディア(放送、出版、広告代理店など)と組んだ企画が多いこと、企画力などがあげられる。それでは、非大手にはまったく可能性がないのか。わたしはそうは考えない。中小製作会社の資金調達が細くなることには、やはり日本映画の将来を考えれば反対である。期待した結果が得られかったことをしっかりと分析し、次のステップにつなげてほしいと思う。


























                                         


 


(キネマ旬報20094月下旬号)