もはや、この映画祭は止めることはできない! 第2回田辺弁慶映画祭


 第2回田辺弁慶映画祭が11133日間、和歌山県田辺市で開催された。この映画祭は経済産業省が後押しするCrIS KANSAI(Creative Industry Showcase in Kansai)の一環として昨年から始まった。とはいえ、予算はほんの僅かで、市の有志の方々が勢いで始めたものだ。そして、映画検定試験1級合格者20名を審査員として招待したいということで、映検を担当するわたしもこの映画祭に係わることになった。本当に小規模な映画祭ながら、新しい人材の発掘とアジア映画人の交流がテーマである。田辺市は南紀白浜に隣接する海辺の美しい町で、今年、特別審査員として参加した大森一樹監督(映検1級!)は、開会式で“田辺は美しい海辺に面していることでは、カンヌ、プサンと変わらない、将来はあのような映画祭を目指そう”と挨拶した。賞は“特別審査員賞”“映画検定審査員賞”“観客賞”があり、そして今年は“東京国際映画祭チェアマン奨励賞”が設けられた。コンペ招待作品は中国、韓国から各1本、日本からは4本の作品が招待された。会場は南紀文化会館大ホールという、800席を越える巨大な器で、400人入場してもスカスカな感じである。しかし、会場はここしかないので仕方ない。今年の特筆すべきことは、昨年招待された20名の検定審査員のうち、7名が自費参加したことだ。それだけ、昨年の映画祭が楽しかったことを証明している。映画祭の名物は夜のトーク・タイムである。ゲストの監督、プロデューサーと審査員たちが、思う存分、映画話しに没頭し、気がつくと朝の4時という毎日である。大森監督は、“1級たって、映画のこと良く知らんわ”と言いながらも、後ろ髪を引かれる思いで1日早く帰り、来年はフル出場すると宣言している。一方、これだけの盛り上がりを見せながら、運営、広報、観客動員、市民とゲストの交流など、まだまだ問題も多い。韓国映画「アクションボーイズ」のゲストとして来日した3人の若いスタントマンと地元の若者の交流会を私は提案したが、結局実現しなかった。中学、高校時代に外国の人たち接することは、今後の人生に大きな影響を与えるはずである。映画祭は、その最高の機会なのに、残念だった。しかし、このような問題は回数を重ねることで解決するはずである。むしろ、こうした動きが地方から始まったことを評価したい。そして、今年は二階俊博経済産業大臣をはじめ、県内外のVIPが応援にかけつけた。もはや、こお映画祭は止めることはできない! 受賞作品は、「オールド・フィッシュ」(ガオ・チュウシュ監督、中国)が特別審査員賞、映検審査員賞のダブル受賞、観客賞は「後楽園の母」(沖田修一監督、日本)、東京国際映画祭チェアマン奨励賞「アクションボーイズ」(チョン・ビョンギル、韓国)である。

(キネマ旬報200812月上旬号)


キネマ旬報映画総合研究所 所長のシネマレポート

二階俊博経済産業大臣(左)とガオ・チュウシュ監督



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映画検定1級の大森一樹監督


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「アクション・ボーイズ」のスタントマンたち


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「後楽園の母」の沖田修一監督