経済産業省、J-Pitch/ユニジャパンの主催による、J-Pitchセミナー『海外セールス・ワークショップ―パネルディスカッション』 “日本映画の海外セールス” が2007年12月15日(土)、渋谷区にある東放学園映画専門大学院大学で開催された。


このパネルディスカッションのテーマは“日本映画をいかに海外に売り出すか”ということである。出席者は、日本映画をはじめアジアの映画を積極的にヨーロッパに紹介しているフォルテシモ・フィルム・セールズ(オランダ/香港)のヴァルター・バレンドレクト氏、韓国映画の海外セールスを手がけるシネクリック・アジアのチ・サンウ海外セールス部長、ロサンゼルスで日本映画を扱うイレブンアーツ代表、森浩太郎氏、そして映画業界誌『バラエティ』香港のローナ・ティー氏が司会を担当した。


ヴァルター・バレンドレクト氏



チ・サンウ氏

森浩太郎氏



ローナ・ティー氏


 フォルテシモ・フィルム・セールスは、ロッテルダム映画祭のプログラマー、ベルリン映画祭のインターナショナル・フォーラム部門広報を担当していたヴァルター氏が1991年に設立した会社だ。以降ワン・カーワイ監督の「恋する惑星」、「花様年華」をはじめ、以前ここでも紹介した黒沢清監督の「TOKYO SONATA」に出資するなど、積極的にアジア映画をヨーロッパに紹介し、最も実績をのこしてきた会社でもある。そこで、ディスカッションは、ヴァルター氏から、海外へ映画をセールスすることの困難さについて、口火が切られた。



 「世界中には映画が溢れかえっており、そこで、映画祭、マーケットなどでセールスが実現する作品は30本に1本くらい。そこで、どういう映画がセールスされるかを事前に検討してから製作することが重要である」とヴァルター氏。

 続いて3人が手掛けてきた事例、また、海外にセールスするために重要な映画祭への出品、またどのような映画祭に出品するのがいいのかといったことについて、それぞれのパネラーから語られた。

  「映画祭といえば、誰もがカンヌ、ヴェネチアを目指すが、その作品にとって、どの映画祭が相応しいかを見極めることが大切。監督の資質、作品の内容などにより、映画祭を選ぶべきである。新人監督なら、カンヌよりも、トロント映画祭の方が選ばれやすい」とヴァルター氏。

 「韓国の監督はみんなカンヌを目指します」と苦笑いのチ・サンウさん。

 日本映画のアメリカでの実力については「現実には本当に難しい。アメリカでは、日本で映画的に評価された作品でも観客をあつめることはほとんど難しい」と森氏。



セミナーの模様


 前回ここで紹介した<韓国映画2007ショウケース ビジネスキャンパス>でも、映画をとりまく環境が厳しくなっていることが強く語られた。この種のセミナーが様々なところで、たびたび開かれるということが、逆に、これからの映画の環境への厳しさ、不安を予測しているのだろう。それにもかかわらず、わたしは、これから映画はアジアの国際化がより大きく発展すると予測している。というより、大手がシェアを伸ばし、インディペンデントが追い詰められている日本の映画制作者、自国の映画が下降している韓国映画人たちにとっては、生き残るにはアジアに打って出るしかない。そのためには、アジア市場というものがどういうものか、本当に理解する必要がある。しかし、まだまだ、我々には経験、情報が十分ではない 。


セミナーの後、プレゼンテーションの講義が行われた(上・下)