cinemania-mvのブログ

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映画好きのミドルエイジです。これまで見た映画についての備忘録として、書こうと思います。

遠い昔に見た名作、数日前に見た話題作、映画を見て思いついたことを
これからつづってみたいと思います。
洋画もあれば邦画もある。作品選びは勝手気まま。
よろしければ、お読みください。
最後にストーリーを書いておきますので、まだ見ていない方は注意してください。

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英国の監督デビッド・リーン(1908~1991)といえば、

「戦場にかける橋」(1957)や「アラビアのロレンス」(1962)、

「ドクトル・ジバゴ」(1965)といった骨太の大作でおなじみだが、

一方で「逢びき」(1945)のように

男女の出会いと別れをしっとりと描きあげた恋愛映画の名作も残っている。

今回の「旅情」(1955)もその一つだ。

 

はじめて「旅情」を見たのは、まだ小学生だった1955年。

映画館は東京・東銀座の東劇だったと思う。

まだ9歳、映画に描かれる恋愛沙汰には、まるで興味はなく、

記憶に深く刻まれたのは、

映画の冒頭、ベネチアのラグーナの中を疾走するオリエント急行の車窓から

ジェーン(キャサリン・ヘプバーン)がベネチアの光景を撮影するシーンで、

彼女が手にしていたマガジン式の8ミリカメラだ。

 

日本でマガジン式のカメラが話題になるのは「旅情」公開の10年後。

まだまだ先の話。

後に女性初の参議院議長になる女優・扇千景が出演したCM、

「私も写せます!」でおなじみの8ミリカメラ「フジカシングル-8」がそれ。

ベネチアの街を撮りまくるヘプバーンの姿はあまりにも印象的だった。

 

そして、再度見直して気付いたことといえば、

ヒロインのジェーンが泊まった「フィオリニ荘」と「くちなしの花」についてだ。

 

「フィオリニ荘」の外の看板には「Pensione Fiorini」とある。

この「ペンション・フィオニリ」のペンションという言葉が気になった。

当時の日本にまだ存在していなかった「ペンション」がジェーンの宿泊先だった。

ペンションは、宿泊料が安い食事付きの宿のことで、

イタリアやスペイン、オーストリアなどで広まっていった。

イギリスやアメリカの「B&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)」、

フランスの「シャンブル・ドット」、日本の「民宿」に相当する。

ペンションと呼ばれる宿が日本に登場するのは1980年代後半あたりかららしい。

 

そして「くちなしの花」。

ジェーンと骨董店の主人レナート(ロッサノ・ブラッツィ)が

サン・マルコ広場のカフェでデートするシーン。

花売りの老婆がやってきて、花をすすめる。

ジェーンが花籠の中から選んだのはくちなしの花だった。

それは、彼女が高校時代、生まれて初めての舞踏会に参加したとき

つけたくても、つけられなかった〝夢の花〟だった。

花言葉は「とても幸せ」。ジェーンにとって、

このうえなく幸せな瞬間だったに違いない。

でも、その夜、彼女はくちなしの花を運河に落としてしまう。

レナートが拾おうと懸命になるが、拾うことが出来ない。

やはり、「幸せ」はつかの間のことだったのだろうか。

くちなしは、もう一度でてくる……?

 

最後に、女優キャサリン・ヘプバーンについて。

まちがいなく名女優であるヘプバーン。

彼女はアカデミー賞最優秀主演女優賞を4度も受賞している。

これは俳優として最多であり、ノミネート(候補)数では、

20回のメリル・ストリープに次ぐ12回。

誰もが認める演技派女優である。

劇中、8ミリカメラを回していて運河に落ちるシーンがある。

一見、美しく見える運河だが、実は生ごみが浮かぶ汚水だまりそのもの。

さすがに演技派のヘプバーンも、飛び込むことを拒んだらしい。

というのも、4年前に参加した「アフリカの女王」(1951)の撮影中、

顔や肌を日光にさらし続けたため、皮膚がんにかかり切除手術を受けた。

それだけに、ヘプバーンは皮膚の病気には注意深くなっていた。

しかし、リアリズムに徹するリーン監督は許さない。

代わりに運河の一画をプラスチック板で仕切り、さらに消毒液を流し込んで予防した。

ヘプバーンは、この汚水だまりのような運河に5回も飛び込んだ。

その夜から、目のかゆみに悩まされ、一種の結膜炎になり、

しばらく、涙目が続いたという。

映画を見ると目に涙をにじませたようなヘプバーンを見受けられる。

逆に、その表情がつかの間のアバンチュールに身を焦がす女の情熱を感じさせた。

 

 

【ストーリー】

アメリカの地方都市で働く38歳の独身女性ジェーン(キャサリン・ヘプバーン)は、アバンチュールを求め、夢にまで見たイタリアのベネチアへ旅をする。学生時代から恋人を探すことに臆病だった彼女は、この旅で素敵な彼を見つけたかった。旅の始まり……。ひとりでベネチアの街を散策するジェーンは、骨董店のショーウィンドウに飾られていた真紅のベネチアングラスにひかれ、店の中へ。そこで出会った店主のレナート(ロッサノ・ブラッツィ)にひかれる。彼もまたジェーンのことが気になった。女性に目がない典型的なイタリア男・レナートは、さっそくジェーンに近づく。彼女もまんざらではなく、ふたりはすぐに恋仲に。有頂天のジェーン。しかし、サン・マルコ広場で待ち合わせていたある夜、レナートが妻子持ちであることを知らせる。ショックだった。しかし、そんな彼女にレナートは、妻子がいることは事実だが、離婚へ向けて話し合いをしているところだと打ち明ける。再び訪れる幸せな時。ふたりはベネチアの街で幸せな時間を過ごす。しかし、旅行者の彼女には旅の終わりの時が間近に迫っていた……。

 

 

 

 

 

 

 

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