映画『地下鉄のザジ』基本情報
1960年/フランス/93分/カラー
監督:ルイ・マル
出演:カトリーヌ・ドモンジョ、フィリップ・ノワレ、カルラ・マルリエ ほか
『地下鉄のザジ』 【6-6】
撮影許可を得て撮っているシーン以外に、ところどころ、ゲリラ撮影も行われている可能性がある。1959~1960年頃のパリの混雑を映し込む映像には、1950年代を中心として1940年代、旧いものでは1930年代製造と思われるものまで、ありとあらゆる欧州車やアメ車が、挙動も含めて当時動いていた通りに、雑多に動いている(若しくは渋滞に巻き込まれ、ノロノロ運転している)。
生成AIでの自然な再現性は、生き物よりも乗り物の方が、技術的には簡単だろう。例えば現在のパリの渋滞映像をもとに、車を1台1台、旧車の生成AI画像に差し替えるとか。尤も、そんな手間を掛けてまで、『地下鉄のザジ』的映画を撮ろうという人もいないだろうが。そう考えると旧い映画は、記録映像としての価値も同時に内包しているといえる。当時、そこにリアルに存在したものが、ザジの前歯の隙間も含めてそのまま映り込んでいること自体に価値があるのではないか。
時代の空気を取り込んでいるナマの記録は、時間の経過とともに、やがてアートの側面も持つのではないか。どこまでが実写なのか判別出来なくなる時代。旧車が走る旧作映画は、やっぱり面白い───、そんなことを感じた。
参考文献
別冊CG「自動車アーカイヴ Vol.2」 二玄社
別冊CG「自動車アーカイヴ Vol.9」 二玄社
「ワールド・カー・ガイド・DX 9 フィアット」 ネコ・パブリッシング