20年前、学生の頃、大学の図書館でVHSで見た「突然炎のごとく」が、デジタル化され、映画館にかかっていたので、これは珍しいと思って、足を運んだ。

原題は「ジュール&ジム」。こんなそっけないタイトルを「突然炎のごとく」と付けた翻訳者、あっぱれ。

 

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ドイツ人男子ジュールとフランス人男子ジムは、ジャンル・モロー演じるカトリーヌに恋をする。だが、ジムには一応、カノジョみたいな人もいて、カトリーヌをジュールを譲る。カトリーヌはジュールと結婚。

今はマツコ・デラックス並みの存在感のあるジャンル・モローだが、若い頃は可憐な感じ。さすが、ヌーベルバーグの女神だけあって、歯並びまで完璧に美しい。

 

このジャンル・モロー演じるカトリーヌは、激情型。映画の言葉を借りれば、「女王様として扱われないと、いつ切れるか分からない」「この世で幸せになれるタイプではない」「結婚には向かないだろう」。

 

 

 

 

カトリーヌは、結婚前夜に夫の母親から、いろいろと嫌なことを言われ、腹いせに昔の男に会う。彼女はこれを「平等」だという。芝居の帰りに、ジュールとジムが、芝居の主役の女性が処女かどうか、くだらない話を詩まで取り出して話すと、川に飛び込んでしまう。
「厄介な女性」である。
 

だが、ジュールは彼女を何とかそばにおいておくくらいしか、もう受け止めることができないし、だから周りに譲っているが、ジムは恋そのものに飛び込むことすらできない。

この映画のキーワードのひとつは「女性解放」だが、何が女性解放か。非常にシンプルな話である。
 

「女も考えて、選択して、行動する」
たったこれだけの話を、2017年の今日でも、分かってない輩がいるのだから、60年代には、ものすごく先をいっていたのは、分かるはず。差別がないとかいっても、いまだにセクハラはあるし、レイプされて被害訴えたらバッシングにあうし、女性の方が給与が低い、女性に押し付けている「女子力」などなど、女性は男性以下であり、常に何かのバッシングにさらされているのは、一目瞭然。映画の中の男性二人は、今の日本や韓国の男性より随分と進歩的。だが、カトリーヌからしてみたら、きっと物足りなかったはず。思いっきり恋愛したいのに、相手が未熟すぎる。

 

女は生きる。恋する。選択する。自分の道を行く。それだけのことである。ジャンヌ・モロー最高。ただもうひとつ付け加えるとしたら、激情型の女性は幸せになれないという幻想の上に、この映画は成り立っているのだけれども、そこは、少し古臭い、だから、同じ激情型としては、幸せになってみせます、と思う。