「クワイエット・プレイス」

 美しい秋を迎えたアメリカの田舎町に住むエヴリン&リー夫妻にはかわいい3人の子どもがいた。ごく普通に見える家族だが、いつからか家の中でも外でも、彼らは互いに大声を出して笑ったり、しゃべったりすることを禁じていた。それもそのはず、声はもちろん、物をぶつけたり、落としたりして音を立てると、突然、”何か”に襲われるという恐怖の現実の世界に生きていたからだ。彼らは自給自足の生活だが、薬などを調達するため、ひっそりと静まる町の無人の店に、山道を無言でもくもくと裸足で出かけることもあった。エヴリンは4人目の子どもを身ごもっていて、その出産の日が近づき…。

 ごく普通の家族が、何かによって、いつ何時も危険にさらされているという設定の映画。こんな話今まで聞いた事もない。セリフはほとんどないが、ジャスチャーや目の動きなど、出演者の力演によって、家族の愛情や悲しみ、怒りや絶望感がよく伝わってくる。しかし、それ以上に、知恵や深い愛情によって、いかなる状況の中でも、生き抜いてみせるという人間の強さが表現されていて、サバイバル魂全開の物語を繰り広げる。どうやって子どもを出産するのだろう?どうやって、”何か”から父親は幼い子ども達を守っていくのだろう?劇中の幾度の難題、危険に家族はこうするのでは?と思うのだが、ことごとく違う選択で、観る者にスリル感を倍増させてくれる。