◆『彼女の名はサビーヌ』 で監督デビュー。サンドリーヌ・ボネール監督インタビュー
アニエス・ヴァルダ、パトリス・ルコントやジャック・リヴェット…。フランスの巨匠たちとの仕事で演技を磨き、充実したキャリアを築いている女優、サンドリーヌ・ボネール。女優として円熟期を迎えているいる彼女の初めての監督作は、一つ年下で自閉症の妹、サビーヌさんの25年に渡る姿を映し出し、自閉症に対する理解と適切なケアを訴えるドキュメンタリー作品だ。
映像的には美しく、そして一つの現実をありのまま映すことを心がけた
作品を観て、まず疑問に感じるのは、フランスにおける自閉症に対する認知や理解についてだが…。
「フランスは先進国と言われていますが、意外なことに色んな所で他国よりも遅れている状況があります。自閉症者への病院でのケアも先進国のレベルであるとは言えません。自閉症に対する理解が進んだのは本当にここ数年のことなのです」
監督自身は幼少の頃、サビーヌさんが周りと違うと周囲が思ったのを見て、何か考えさせられたことなどはあったのだろうか。
「何が普通で何が普通ではないということは、視点の問題だと思います。確かにサビーヌは人と少し違いますが、大きくは違わない。人と違うということを別の視点で見ることが出来れば、普通の事として受け入れられるのではと思います」
フランスの社会問題についての問題提起、という所から出発している本作の製作で心がけたことについても聞いてみよう。
「サビーヌの生活はとても厳しいものがありますが、映像的には美しく、家族の愛情や優しさが表れるように、そして一つの現実をありのまま映すことを心がけました。身内の撮影は簡単に見えて難しく、程よい距離を保つようにもしました。サビーヌはとてもイノセントで無防備なので、彼女のプライベートを盗むようなことをしてはいけないと思っていました」
この作品を製作したことは、今後きっと役に立つでしょう
この作品を製作してから時間が経過していますが、何か変化を感じることはあったのだろうか。
「公開されたことによって、いいことがあったと感じています。私達家族にとってもプラスに働きました。今まで家族の中だけで共有していた部分を、映画の中でさらけ出したことである意味ホッとしました。そして同じ自閉症の家族から恥ずべきことではない、という手紙ももらいました。個人的にも映画に携わって25年になりますが、ドキュメンタリー作家としてのこの経験はきっと役に立つでしょう。次にフィクションの作品を作るための第一歩にもなると思います」
ということは、次の作品にも着手しているのだろうと、最後に2作目について聞いてみた。
「フィクションとしては1作目です。シリアスなドラマで今脚本にしているところです。パトリス・ルコントの『親密すぎるうちあけ話』の脚本家と書いているところです」と答え、あらすじも少し話してくれるなどサービス精神溢れる監督だった。
『彼女の名はサビーヌ』
2月、アップリンクにてロードショー
監督・脚本・撮影:サンドリーヌ・ボネール
出演:サビーヌ・ボネール
配給:アップリンク
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/sabine/