我が家は食に対する探求心が強い。
例えば、旅行に行くとき、「何をするか」ではなく、「何を食べるか」を中心に予定を組み立てるし、会話の半分は、「昼ご飯を何にするか」、「夕飯を何にするか」、「最近話題のレストランはどこか」という話題が占めている。
しかし、子供ができて、しかも娘が二人になって、食卓は好奇心と幸福だけではなくなった。妻は、大人用、長女用、次女用と3種類の食事を毎日3度作っている。気力と労力がかかる終わりのないループだ。
しかし、子供は理不尽だ。妻が一生懸命用意した食事を理由もなく、食べない。
長女:「もういらない」
妻:「なんで食べないの?大きくなれないよ!」
長女:「くぁwせdrftgyふj」
ガシャーン(皿ごとひっくり返す)
僕:「・・・・・」
という光景は珍しくない。我が家の食卓は時に緊張感に包まれる。
でもこれは、我が家に限ったことではないのではないか。小さい子供のいる家庭は、多かれ少なかれ、食べさせるということに課題(ときにはペイン)を持っている。たとえば、子供は残酷にも、親が丹念に作った食事よりも、味付けの濃い既製レトルト品を好んだりする。栄養のある野菜よりも、甘いお菓子の方が好きだったりする。
The Hotcake Factoryはそのような、妻や僕が実際に感じた「解決したい課題(大きく言えば世界のペインポイント)」が出発点になっている。
少し話が飛ぶが、経営において一番大切なことに、MVV(Mission/Vision/Value)がある。
Mission:
何故その事業を行うのか。社会的使命は何か。
Vision:
Missionの達成に事業でどう寄与するのか。どうありたいか。
Value:
Visionのために、大切にする価値観、行動規範は何か。
MVVは人によって言葉の定義はまちまちであるし、会社によっては、経営理念とか、クレドとか、単にビジョンとか、呼んでいたりもする。どんな言葉であれ重要な点は、そこに内発的動機付けを行えるだけの強い意志があるか、だと思う。
そのあたりの重要性は(こすり倒されたコンテンツではあるが)TEDでサイモン・シネック氏が熱弁をふるっている。
https://www.ted.com/talks/derek_sivers_how_to_start_a_movement
さて、The Hotcake Factoryに話を戻すと、ミッション(つまり実現したい社会)として、「幸せな家庭の食卓」というのが明確にある。
一人でも多く、一分でも多くの食卓で笑顔が増えれば、世界は今よりも1ミリは良い方向に進むと本気で考えている。(僕と妻は休日の幸せなブランチの時間を「食卓のゴールデンアワー」だと考えていて、この瞬間を増やすことができればいいなと思っている。)
食卓を笑顔にするためには、食事を作る人の満足(親)と、食べる人の満足(子)が必要になる。
作り手としては、栄養が豊富であること、安心安全であること、子供の口に合うことはもちろん必要だし、作るうえで簡便であってほしいと思っている。ただ、一方で簡便であってもレトルトやインスタント、また出来合いの惣菜などはやはり少し気が引ける。最低限一手間は自分の手を加えたいと考えている。
子供は、おいしいものが食べたい。あったかいけど、熱すぎない、辛くなくて、酸っぱくないもの。それと、子供というのは「お手伝いが」したいもので、包丁もコンロも使えない子供にとって、最初のお手伝いは「混ぜる」ことになる。
だから、妻は野菜パウダーが混ぜられるホットケーキの粉を売ろう決めた。ホットケーキなら、子供が手伝えて、野菜を織り交ぜられて、簡単だけど一手間必要で、そして何より、子供が好きだ。
そのためにValueとしては「素材にこだわる」「味にこだわる」「オシャレである」「手軽である」といった価値観があるのだろう。そのあたりはまだ明文化はされていないのだが、、、、
Whyの規定が重要な理由の一つに、やるやらないの判断のスピードが関係してきていると思う。
目指すべき世界と、そのための道筋が見えていると、やるべきこと、やるべきでないことが見えてくる。
The Hotcake Factoryは、もしかしたらミックスだけではなく、ホットケーキを焼くためのツールを販売するかもしれないが、ホットケーキレストランといった、外食産業はしないだろう。
The Takoyaki Factoryというサブブランドを出すかもしれないが、パッケージされたクッキーを売ることはない。
それは先に述べた、「食卓のゴールデンアワー」につながっているかどうか、それが一番最初の問いにあるからなのだ。
( `ー´)ノ
※と、書きつつピボットしたらすみませんw