長い時間が必要なのでドラマに熱中することは滅多にないのですが、本作には久しぶりにハマりました…後で日本発祥の作品だと知るんですが、この凄く知的な雰囲気は日本発かぁ、そうかぁ、と妙に嬉しくなった、『ライアーゲーム』
大学。ハ・ウジン心理学教授が「誰も信じるな」と講義している。そしていくつかの質問をしながら、学生たちの嘘を次々暴いていく。そこへ、警官隊が乱入し、ハ教授を逮捕する…1年後。バイト先へ急ぐナム・ダジョンに大きなカバンを抱えた老婆が近づき、行き先が分からないと住所を見せる。人の良いタジョンは老婆を案内するが、途中の公園で用を足すと言って老婆が姿を消し、帰って来ない。待ちくたびれたタジョンがカバンを開けると、そこには5億ウォンの札束が入っている。アパートに帰ったタジョンの目には、カレンダーにつけた学費・家賃・借金返済日のマークが目に痛い。翌朝警察へ届けようと眠りにつくが、朝訪ねてきたのは、馴染みの借金取りタルグだ。タルグに大金だと気づかれたタジョンは、カバンを抱え必死で警察に向う。警察の前でタルグと揉み合っていると、カバンの中の携帯が鳴る。優勝賞金100億ウォンの"ライアーゲーム"への招待だ。そして、タルグが欲にかられて、参加を表明してしまう。そこへ、警官姿の男が近づき、タジョンに握手を求める。"ライアーゲーム"のMCカン・ドヨンだ。さらにJVN放送局のスタッフたちがカメラやマイクを持って三人を取り囲む。タジョンの記念すべき"ライアーゲーム"参加の瞬間だ。40人が参加する"ライアーゲーム"収録初日のJVN放送局で、タジョンはトヨンのインタビューを受ける。カバンを持った老婆から既に番組の仕掛けだったと言う。優勝賞金100億との話に、バイト先のカフェでもタジョンは上の空だ。そこへ高校時代の恩師が訪ねてくる。恩師は、ライアーゲーム1回戦の対戦表を見せる。何と1回戦は、タジョンと恩師の対決だ。恩師は、敵対したふりだけして、後で2.5億ずつ分け合おうと提案する。失踪した父親が残した1億5千万の借金に苦しみ大学も休学中のタジョンの心は揺れる。そして1回戦の日、タジョンはスタジオに登場する。1回戦は"5億ゲーム"。対戦相手と自分、お互いの5億を奪い合うのだ。相手から奪った額、すなわち5億が最高賞金だ。期限は7日。ゲームが始まる。タジョンは恩師を信じ、二人の10億を銀行の貸し金庫に預ける。恩師はタジョンを勝たせると貸し金庫の鍵をタジョンに渡す。しかし、翌日の中間結果では、タジョンの残高は0だ。恩師が策を弄して裏切ったのだ。苦しむタジョンの姿に、番組の視聴率は鰻登りだ。その放送を刑務所から見ている者がいる。天才詐欺師ハ・ウジンだ。タルグは、刑務所仲間で出所間近なハ・ウジンを思い出し、手助けを頼もうと考える。いよいよ、天才詐欺師の元教授ハ・ウジンの出番だ…
元心理学教授で天才詐欺師ハ・ウジンに、映画では端役しかありませんがTVでは人気が高いというイ・サンユン、嘘がつけず借金に苦しむ休学中女子大生ナム・ダジョンに、「少女怪談」で絶賛した子役出身絶世の美少女(といっても20代半ばですが)キム・ソウン、"ライアーゲーム"の企画・MCカン・ドヨンに、『トロットの恋人』「殺人の川」などで独特の空気感を漂わせる異色の個性派シン・ソンノク、ウジンの母親に、超のつく名女優キム・ヨンエ、タジョンの借金取りながら最後までタジョンを支援するチョ・ダルグに、「ミスターGO!」でも印象的な映画でも名脇役チョ・ジェユン、逃げ回るタジョンの父親に、お馴染みオム・ヒョソプ、"ライアーゲーム"の放送PDに、何といくつも主演映画を持つ個性派美形チャ・スヨン、ライアーゲームの参加者ブルドックに、映画でもお馴染み個性派脇役イ・チョルミン。
まずお詫びしなければならないでしょう。BSフジで放映され毎週楽しみに観ていたんですが、何と中盤まで、この作品が日本の漫画や映画化までされたドラマのリメイクであることを知らずに観ていた訳です。お恥ずかしい。面白い筈だなぁ、登場する練りに練られた知的なゲームの数々が日本発の原作の力だったんだ、ということです。ところが、慌てて本家のDVDを借りてつまみ食いしながら観てみたんですが、どうも韓国版のように入り込めません。勿論、戸田恵梨香も魅力的ですが、ゲームの舞台が豪邸の暗い地下密室のような設定で、知的興奮度は高いもののエンタメとしての華やかさが感じられないのです。一方の韓国版は、TV放映という設定が加わり、各ゲームの舞台がテーマパークのような華やかさを持ち、知的な上、明るく大がかりな演出で物語を輝かせているという感じです。登場する「5億ゲーム」「少数決ゲーム」「リストラ(整理)ゲーム」「大統領ゲーム」などは殆ど原作から持って来ていて、その知的な魅力は原作によるものではありますが、舞台を変えることでドラマとしてオリジナルとは違う魅力を発揮しているように感じます。さらに、主演3人のいかにも韓国ドラマ的な因縁物語も加わっているので、さらに印象を変えているでしょう。信じるか、裏切るかを迫る「囚人のジレンマ」などのゲーム理論を駆使した難解なゲーム展開を純粋に楽しむオリジナル日本版の熱烈なファンが多いことは容易に想像されますが、個人的には、オリジナルではここまではハマらなかったんではないかと思われます。さらに、個人的に次週が待ちきれないくらい熱中したのには、シン・ソンノクとキム・ソウンの魅力を挙げねばならないでしょう。特殊な経歴から感情・表情を完全にコントロール出来る、との設定シン・ソンノクは恐ろしいほどに不気味ですし、馬鹿がつくほど人を信用してしまうタジョンを演じるキム・ソウンは、その類まれな美貌を最大限に活かしつつ物語に華を添えているでしょう。
恐らくオリジナルのファンは、この韓国版には満足しないでしょう。ゲーム場面ではその難解さを上手く説明できずに雑な感じが否めませんし、ひょっとしたら主人公三人の韓国ドラマ的因縁も純粋なゲーム世界を邪魔していると感じるかもしれません。個人的にも、時間があるならオリジナルできちんとこの複雑なゲーム世界と向き合いたい気がしますが、原作漫画や、シーズン1、シーズン2、二本の映画化作品など量も膨大なので、なかなか難しいでしょう。この韓国版は、ある意味、オリジナルへのちょっと軽めな入門編として捉えるのが良いかもしれません。ただ、少なくとも、オリジナルの世界観の凄さを充分感じさせるレベルだ、とは思います。多分オリジナルを超えてはいないでしょうから、五つ星は見送りますが、個人的には、これまでのドラマでは感じられない凄い知的世界をワクワク垣間(カイマ)見させてくれた、と五つ星級の感謝を表したいと思います。