「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」
広大な地下迷宮、通称「ダンジョン」を中心に栄える迷宮都市オラリオ。
英雄譚にあるような「異性との運命の出会い」にあこがれ、冒険者となった少年ベル・クラネルは、場違いな強さを持つモンスター「ミノタウロス」に襲われる。
なすすべもなく追いつめられたベルは、間一髪のところでトップクラスの冒険者アイズ・ヴァレンシュタインに助けられる。
その瞬間、アイズに一目惚れしてしまったベルは、いつか彼女に釣り合う冒険者になろうと行動を開始するのであった...。(以上、Wikipedia引用)
本ブログの初回は、今年4月よりアニメ化されている、言わずと知れた「ダンまち」の世界からの問題です。
ダンジョンでの痛快なアクションや主人公の圧倒的成長スピード、さらには今後の主人公のモテっぷりにも筆者としては目が離せません...!
さて、そんな夢の迷宮都市オラリオにおいても種々雑多なトラブルはつきものであり、これに対して我々司法試験受験生としては、法律を適用することにより公平・公正な解決を図りたいところであります。
願わくばベルくん達が犯罪者とならぬことを...。
では、始めましょう。
事件は、アニメ第5話「魔道書(グリモア)」で起こった...。
第2. 事実の概要
酒場「豊饒の女主人」に立ち寄った甲は店内に保管されていた本Xを発見する。聞けば、客が忘れていった代物とのこと。甲は店員乙にそそのかされ、女主人に同意を得てXを一時的に借りることとした。しかし、実はXは1度読むと効用が失われてしまう魔道書(グリモア)であったのであり、これに気づかぬ甲はXを滅失させるに至った。甲、乙の罪責を論ぜよ。
甲→ベル、乙→シル ですね。
第3. 検討
1. 窃盗罪(235条)の成否
(1) 占有の有無
まず、刑法235条は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と規定しているところ、本条の「他人の財物」の意義が問題となります。
この点、「他人の財物」とは他人の占有する財物のことをさします。
魔道書が「財物」にあたるかについては問題ないでしょう。
ダンジョン攻略が一種の職業と化した社会において、呪文の習得を可能とする魔道書は相当な価値を有するといえるからです。
では、魔道書は「占有」されていたのでしょうか?
(ご存知の通り、窃盗罪の保護法益について本権説と占有説で対立がありますが、今回は省略させて頂きます)
事実の概要をもう一度見て頂きたいのですが、この魔道書は客の忘れ物であります。
つまり、「占有」が離脱しているのです。
とすれば、本件魔道書は「他人の財物」に当たらず、窃盗罪は成立しないようにも思えますね。
しかし、占有の有無の判断基準は占有の事実と占有の意思の相関関係により定まるところ、本件魔道書は酒場「豊饒の女主人」の責任者たる女主人が占有していると考えられるのではないでしょうか。
これを本件についてみますと、本件魔道書は客の忘れ物として店内の棚にしまわれていた(アニメ参照)のですから、店で魔道書を保管、つまり占有している事実が認められます。
また、占有の意思についても、魔道書を保管している事実から、女主人は少なくとも客が取りにくるまでは占有を確保する意思があったといえますので、これも認められますね。
したがって、本件魔道書は「他人の財物」であるといえます。
...今回はここまでにします。次回は窃盗罪の構成要件該当性の続き及び被害者の同意について書く予定です。
